わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
それにしてもーーーと母が大きくため息をついた。

「ジャニアルス国に戻って医薬品の補充をしていたら竜王陛下が私たちを探していると神社の神職さまが血相を変えて家に来たから、本当に驚いたわ。この世界に派遣された私たちだって天上界のことは何も知らないし、私たちも”救国の旅人”の始まりのお話はおとぎ話だと思っていたのだから」

「そうだぞ。しかも直々に私たちの家にお越しになるし。呪いの話をされた時には気が遠くなりそうだったんだ。
いくら幼い頃から体力が落ちた時は代々継承されているピュリラ様の薬を飲んでたとはいえ、女神の血だけは消すことはできない。急に死ぬことはないがじわじわと長い年月をかけて体力と気力を奪われていたと思うとゾッとするよ」

代わる代わる話す両親の口調は軽いけれど顔色はよくない。二人とも何だか急に年を取ったみたいに見えるのは気のせいではないと思う。

「でも、神職さまから神社でピュリラ様のお力で湧いた泉の霊水を与えれば呪いから解放されるって聞いて急いで霊水を頂いてこちらに連れて来てもらったのよ。本当に心臓が縮み上がったわ」

「やったことに後悔はないけど、心配かけてごめんね」
両親に向かって私は深々と頭を下げた。

「まあ、あなたに悪気はなかったんだし、身体が勝手に動いたんでしょうけど、ね」
母は少し笑ってくれたけれど、父は無言で眉間にしわを寄せた。

「竜王陛下」
硬い表情の父はクリフ様に向き直り膝の上のこぶしを握り締めた。

「天上界の出来事に口を出すことは本来なら許されないのでしょうが、私の娘が巻き込まれている以上、聞いておきたいことがございます」

クリフ様が深く頷くのを見ると
「娘が女神の血を引くものだったとあの魔女の一族の末裔が知ったらまた何か起こるのではありませんか。誇り高い竜族の中には純血種に拘る者がいるのではありませんか?
この国に娘を置いていくのは不安で仕方ありません」

父親らしい意見に私も言葉を飲み込んでしまった。
< 187 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop