わたし竜王の番(つがい)です　 ～気が付けば竜の国～
「楓の父上の心配もわかる。
今回の事件は私の父の弟である前王弟の長女の舅へナーバルが孫娘を王妃にしてこの国の権力を得る策略が失敗したことに起因している。
首謀者のへナーバルは既に処分したが、それに恨みを持っていた愛人がいたとは知らなかった。私の調べが足りなかったのは否定できない。そのせいで楓は傷を負ってしまったのだしな」

私に対するミーナ姫の暴言をきっかけにクリフ様はヤナーバルを呼び出し、ミーナの件だけでなく彼と彼の一族の不正までも暴いて叱責したらしい。
ヤナーバルは陰で領地の民に重い税を課したり税収をピンハネしたりしていた。それより人道的に酷いこともしていたと聞くが実に巧妙な手口でなかなか証拠をつかむのが大変だったようだ。

ヤナーバルが私を突き落としたのはクリフ様にその叱責をされた帰り道だった。
あの後、ヤナーバルは地上に落とされただのドブネズミとして暮らしているのだが、今後生き残れる可能性は低いだろう。あの場で死刑にされなかったよりも苦しい生活をしているはずだ。

アリアナ様の侍女としてマルドネス様のお宅に入り込んだのはもともとミーナ姫の乳母をしていたことのあるヤナーバルの愛人だった。
侍女として知り得たマルドネス様の家の事情をヤナーバルに報告していたらしい。

姉の紹介で来た有能な侍女をマルドネス様とアリアナ様は疑いを持たなかった。侍女とヤナーバルが愛人関係にあったと知っているのはヤナーバルの細君だけでその細君も昨年病で亡くなっている。
そうとは知らずマルドネス様のお姉さまもよく働き貴族世界に詳しいヤナーバルの愛人のことを信頼していたらしい。

今回のことで従兄弟のマルドネス様は王位継承権を放棄し、一臣下として竜王であるクリフ様に尽くすと約束してくれている。

そしてヤナーバルの一族だけれど、魔法力は奪ったがヘタにすべての権力を奪うと、また逆恨みが生まれる。だから、一度彼らを地上に落としクリフ様の経営する会社の一つで働かせることにした。もちろんクリフ様の忠実な部下がいる会社だ。
かれらはもう竜の国には戻ることはない。

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