わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
ゆっくりと歩いていたものの長くてふわふわしたドレスの裾の扱いに慣れず、しかも慣れないハイヒールで裾を踏んでしまいよろけそうになりひやっとする。

危ない、危ない。
これ以上の失態は勘弁して欲しい。

「楓さま、ドレスの裾を前に蹴り出すようにして足を出すと歩きやすいですよ」
後ろに控えて付いてきてくれている侍女さんが教えてくれる。

「え、そうなの?」
蹴り出していいの?

「どうぞ、お試し下さいませ」

彼女の言うとおり足を前に蹴り出すと、ドレスの裾がぽわーんと前に出て裾を踏むことがなくなった。

おおっ、歩きやすい。

後ろにいる侍女さんに笑顔を見せると彼女も満足げに頷いてくれた。

格段に歩きやすくなった私は足取りが軽くなりさっきよりも注意深く周りを見るという余裕も生まれた。

この廊下は長いけれど、何故か人の気配はほとんど感じられない。
それに一部屋ずつがかなり大きく作られているのかドアの数も少ないのだ。

そう言えば、私が寝ていた部屋もかなり大きかった。
大きなベッドのあった部屋のほかにシャワー室と洗面所、トイレがあり他にも何かわからないドアが二つもあった。

「ここはホテルですか?」と聞いたら
「ここは宮殿の中でもクリフォード様のお住まいもある居住区域でございます。今から向かうのはお仕事をされる区域でございますよ」と侍女さんに笑われてしまった。

なんて立派なお屋敷なんだろうと思ったけど、宮殿ってことは城、お城か!
そういえば、壁には燭台があってずいぶんと雰囲気を出している。

クリフォード様って見た目通りのリアル王子様だったの?!
ならば我が国の政府の関係者がペコペコ頭を下げるのも納得がいく。

やっぱりとんでもない所に来てしまったらしい。
背筋が寒くなりゾッとする。やっぱり帰りたい。

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