わたし竜王の番(つがい)です ~気が付けば竜の国~
でも、
寝ている私をクリフ様が抱いて竜の背中に乗ってここまで来たと。
しかも、その間何度も口から竜王の気を注入していたーーーーうーん。
夢だと思ったあの感覚は夢ではなかったということになる。
確かにこんな移動方法の説明をはじめからはできないよね。
私が質問したらダニングさんたちが困った顔をした意味がよく分かった。
あの時にこの説明を受けていたら、国際問題とか関係なく私は同行を断っただろうし、逃げ出していただろうから。
「楓、私は楓に何のもなく竜の国を見て欲しかったんだ。こんな形で連れてきたのは悪かったと思っている。でも竜の番とわかったからーーー」
「クリフ様はちょっと黙っていて下さい」
私はきつい目をして彼の言葉を遮った。
今まで竜王にこんな失礼な態度で接するものはいなかったのかもしれない。
クリフ様だけでなくその場にいた全員が驚きで目を見張っている。
「私は他の方からのお話を聞きたいのです」
はっきりと言ってクリフ様に背を向けた。
私の発言に目を丸くしていたヘストンさんとラウルさんだったけれど、すぐにラウルさんは大声で笑いだした。
「やっぱ、楓さんはおもしれえ」
お腹を抱えて笑うラウルさんにヘストンさんもクスクスと笑い出した。
クリフ様はそんな二人をひと睨みしたけれど、咎めるわけではなく黙って腕組みをする。
もう一度クリフ様の顔を見つめると、彼は黙ったまま頷いてくれる。
そんな彼に微笑みを送って私は背を向けた。
「ダニングさんにも番だという方がいらっしゃるのですか?」
背中にクリフ様の視線がビシビシと痛いけれど、とりあえず彼の意見は聞きたくないので無視を決め込む。