わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
「実はクリフ様にもう一つお願いがあるんです」

「いいよ、楓のお願いなら何でも」
クリフ様が嬉しそうに目を細める。

私がクリフ様にお願いごとをすることはあまりないのでクリフ様はいつもそれがご不満らしい。

なので、普段から会話の中であえてお願いというキーワードを使うようにしているが、今回は本当にお願いだ。

「私に家庭教師のような方をつけていただけませんか?
図書室での本で勉強では効率が悪くて困ってるのです。
この国の成り立ちや仕組み、あと竜族の、特に貴族についてのことやこの国のマナーも知りたいんです。オリエッタやパメラは侍女の仕事もあるし、それに、あまり彼女たちの仕事を増やしてしまっては申し訳なくて」

いろいろと知りたいことがあるのだけど、探して調べるという作業が思いの外手間がかかる。
だったら専門の方から教えを受けるのが早いのではないかと魔法省の長官に言われたのだ。


「クリフォード様に言えばすぐに手配してもらえるはずだぞ」
クリフ様の恩師の一人だという魔法省の長官は250才を超える年配の男性である。

「もちろん、魔法に関しては私が楓の先生だが」
白くて長い顎髭をコスコスと撫でながらニヤリと笑っていた。

魔法の先生と言っても、私に魔力の資質はほとんどないらしいから魔法学の基礎理論を学ぶだけでしかないのだけれど。


「いいよ、何人かつけよう。細かい希望はあるか?」

「いいえ。お任せします。私はその方のお仕事の邪魔にならないようにしますね」

「わかった。声をかけておくから、安心して。あ、いや、条件がある」

スムーズに進んでいた話がいきなり歩みを止めた。

何かしらとクリフ様の様子を窺うとイタズラっぽい笑みを浮かべている。

「楓の私に対する敬語、丁寧語一切禁止。どう?守れる?」

敬語禁止…

竜王さまだよね、この世で1番偉い人だよね。

うーん、厳しい、かなり厳しい。
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