わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~
「マルドネス様、おはようございます。お仕事の邪魔をしてしまい申し訳ございません」

「ああ、そうか。これらに泣きつかれたか」
私と私の前で泣きそうになっている男性たちの顔を見てすぐに事情を察したらしい。

「お前たち情けない顔をするな。もう少し手を抜けばいいではないか」
わたしのように、と言ったマルドネス様に皆が顔をしかめたのを見て私にも内情が少しわかった気がした。

ここにもいるわけね、彼らを忙しくさせている原因の人が。
お気の毒に・・・と心の中で彼らを労った。

「マルドネス様、奥さまの体調はいかがですか?」
先日耳したマルドネス様の奥さまの話題を口にした。

「そうなんだ、つわりがひどく参っているんだ。私も心配で…仕事が手に付かない」
全くもって困っているんだ、とマルドネス様は心底心配でたまらないという顔をした。

「医者も助産師も問題ないと言っておりますし、あなたが隣で騒ぐから余計につわりが酷くなるとアリアナ様は仰ってました。
母子の健康のためにもマルドネス様は仕事をして下さい」

突然後から来たヘインズさんが仁王立ちで言い放ち、マルドネス様はちょっぴり傷ついたお顔をした。

「ひどいつわりは私のせいなのか?」

「そうは言っておりません。ただアリアナ様はたまには一人で休みたいと。マルドネス様にはしっかりお仕事をして頂いて父親となる自覚を持って欲しいとおっしゃっていました」

「・・・そうか、アリアナが・・・」

明らかにショックを受けたマルドネス様は見るからに落ち込んでいる。

ちょっとお可哀想だけど、パメラさんの情報ではマルドネス様は番であるアリアナ様の妊娠が心配で構い倒しているらしい。

確かにちょっと過干渉されると辛いかも。
妊娠したことで離宮に住むことになったアリアナ様にはまだお会いできていないけれど、アリアナ様が安定期に入られたらぜひお会いしたい。

「働いて下さいませ、マルドネス様」
肩を落として拗ねるイケメン王族にヘインズさんはピシャリと言い放った。

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