紫陽花のブーケ

近所のスーパーで食べられそうな総菜パンをいくつか買ってマンションに着いた

会社を出た時に暗くなりだした空は、地元のスーパーを出た途端本降りの雨になり、帰宅した時には所々濡れてシミを作っていた
ベランダから洗濯物を取り込んだけど、こちらもひと足遅かった

――あ~あ、泣きっ面に何とかです、課長……

サッシを閉めてホッとした途端、雨で濡れた頬に涙が零れる


ずっと暗い気持ちを振り切れない

これから受けるであろう会社からの圧力とか、相手の影響力がどこまであるかは
不安はあるけど、大したことではない

そりゃチョットはビビるけど、私のモヤモヤの一番の理由はそんなことじゃない


社に戻る途中、声を潜めて夕香里が教えてくれたのは、
このお見合いを断れないもう一つの、もしかすると最大の要因

「お嬢さんと秋元課長、学生の時に付き合ってたんだって」

私も初めて聞いた、秋元課長の過去だった―――

< 13 / 32 >

この作品をシェア

pagetop