紫陽花のブーケ

二人は同じ大学出身で、彼女はそこで当時から高嶺の花と言われていた
やがて付き合いだした時は、美男美女のとても絵になるカップルで仲も良かったそうだ

やがて大学院を卒業する頃になっても二人の仲は続いていて、
このまま結婚すると周囲は疑わなかったし、秋元さんは彼女の親の勤める銀行に
入行すると思われていた

しかし彼はうちの会社に入社した
するとそれがもとで、二人は引き離されたそうだ


――秋元さん、未練はないのかな……

ふと過ぎった想いが、窓の外と同じ真っ黒い雲のように広がって
心の中がスッキリと晴れないのだ


本音を言えば

私は周りが何と言おうとどうでもいい
彼がいいと言えば、
最後の手段でお腹の子(仮)を盾にし、
既成事実で押し通すことだって厭わない

釣り合わないとか身の程をわきまえろとか
この短い間にも言われ続けたことだし

その通りですが何かって、何人か返り討ちにしてやった
課長は気づいてないけどね

面と向かって暑苦しい思いをぶつけてくる高杉なんて
そういう意味では可愛い方よ
正々堂々と向かってくるからむしろわかりやすい
面倒くさいけど私も正面から言い返すからストレスはその場限りで済むもの

でも課長はどうだろう……

あんなに真っ直ぐな人が、今まで一生懸命尽くしてきた会社に悪く言われたら

どれだけ辛い想いをするか……

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