紫陽花のブーケ

それに秋元さんは出世にも意欲的な人だ

皆に認められるように、彼は表に見える何倍も努力している

私はその背中をずっと見てきたから知ってる

『認められて肩書が上がれば、より多くの社員を自分の考えで動かして、
より大きな仕事ができる』

階級が上がって任される仕事が大きくなる度に、心が奮い立つように感じるのだそうだ
私にもいつかそんな喜びを味わわせてやりたいって言ってたのを覚えてる

お見合い相手のご令嬢と結婚出来れば、
大きな後ろ盾になるし出世のスピードが段違いに早くなるだろう

それは私にはできないことだ

…嫌いで別れた仲じゃないみたいだし、
向こうはまだ課長を好きだって言うんだし
だから無理やりの政略結婚ってわけではない

―――課長、きっと大事にしてもらえそう


今、妊娠していなければ私は最後まで足掻くつもり
勝算は低いけど、少なくとも彼の隣を望んでも彼の汚点となることはないから
最終審判は秋元さんだから私は納得できる

でも妊娠、していたら

私とお腹の子の存在は彼の出世のチャンスを潰すだけでなく、
評判までも落とすことになりかねない

――普通のデキ婚とは違うのだ
私にとっての最後の盾は
彼にとって最悪の結果を招く

会社の上層部の顔に泥を塗ることになるのだから、お見合いは防げても彼の未来も塞いでしまうかもしれないのだ

そんな私と一緒になった彼は、今は良くてもいつか後悔するんじゃないか



……子どもは、愛してもらえないないんじゃないか?




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