紫陽花のブーケ
財布とスマホを持って、傘を差し、近所の薬局へ向かう
外は真っ暗な上、風も雨も激しくなっていた
点滅する街灯を頼りに、傘の柄を両手でしっかり握りしめ、斜めに叩きつけてくる雨に立ち向かうように進む
駅から帰るまでで既に水玉模様だったスーツは、今は一段暗い色調に見える程ずぶ濡れで
道のそこここにできた水たまりを避けきれなかったせいで、靴の中までビチャビチャだ
――行く手を阻まれてるみたい
そう感じるほど激しい嵐の中を歩く
否応なしに不安は募るけど、ifだけじゃ答えは出ないから
結果を自分に突きつければ、きっと覚悟も決まるはず
そう引き返そうとする弱い自分を叱咤して、前に進む
泣きたくなるような心の叫びを押し殺して
――こんなに会いたくて仕方ないのに
私に課長を諦めるなんてできる?
口を引き結び、奥歯を噛み締める
まだ泣いちゃダメだと自分に言い聞かせて
嵐の中、真っ暗な闇へ挑むように私は歩き続けた……