紫陽花のブーケ

３月～恋人にはなったけど

「あ～信じらんね！」

―――また言ってる

「秋元課長の彼女さんがお前とか！
俺近い将来寺内を”奥様”とか呼ぶの？！マジでキツイわ～」

「私もあんたにそんな風に呼ばれたか無いわ！
とりあえず黙って！仕事して！！」

んっとに忙しいのに、さっきから愚痴しか言ってない同期の高杉にウンザリだ

今は年度末の決算真っ最中の上、春の新商品を売り出したばかりで無駄口を叩く暇など無いというのに、奴はこのところ私の顔を見ればず～っとこの調子だ
ろくに仕事しやしない

「あなたがそうやってウダウダしてる分、私の残業と休日出勤が増えるの！
愚痴ってる暇あるならとっとと外回り終わらせてよ！！」

「いいだろ愚痴くらい。どうせ残業も休日も秋元課長と一緒なんだから」

―――それとこれとは違うっ！

「…ねえ、それ本気で言ってる？
あの課長がし・ご・と・で会社来てるのに、上司と部下じゃない空気になると思う？」

「思わない」

「分かってるなら…」

「少なくとも寺内とは想像つかん」

…はあ？

「あ！いや、あ、ははは…あ、もうこんな時間！取引先行ってきま～す」

私の怒気に感づいた高杉は、慌ててデスク上の書類をかき集め、バタバタとオフィスを出ていった