紫陽花のブーケ

それから聞かされた自分の状況に愕然とした

どうやら自分は政略結婚をさせられるらしい
しかも、本部長と六角銀行の水島が互いの不正を黙する担保として

相手は六角銀行の水島の娘・絵理華で、彼女は今、わが社の社長の第二秘書に収まっているらしい

婚約したはずの美季については、社内的にきちんとした形で報告していなかったのを逆手に取られてしまった

“口約束”の婚約はなかったこととして、絵利華との話が進んでしまっている

―――本人の全く与り知らぬところで

「ばかばかしい!」

たった今聞いた話を振り払うように吐き捨てる

優秀な頭脳は事態を挽回すべく算段を始めながら、心の内に積もる怒りがつい、口から洩れ出でた

「私はただの社員だ、私と政略結婚などして何の意味があるというのか。
しかも美季を辞めさせてまで…」

「でもその美季が課長には会わない覚悟をしていたら?」

「っな!」

銃で頭を打ち抜かれたような気がした
もちろんそんな経験はないが、一発で心の深いところを抉られたような衝撃だった

「…美季が、そう言ったのか?」

呆然として、勝手に口が動いていた

ハッと我に返り近藤を見ると、彼女はこちらを訝るように目を細めている

―――試されているのか?

ふとそんな考えが浮かび、背筋が冷えた


今は、彼女だけが美季に繫がるたった一本の糸だ
絶対に断ち切られてるわけにいかない


彼女が満足する最適解は何なのか、私は必死に考えを巡らせた……


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