紫陽花のブーケ
4月~春の嵐に心乱され
「美季、大丈夫?」
昼休み、一緒にランチに出かけた夕香里が
心配そうな顔で私を覗き込む
原因は私の目の前にある
芳醇なチーズとクリームのハーモニー、
ピリリとしたアクセントを加える胡椒に
カリカリベーコンの香ばしさ!!
それは大好きなカルボナーラ!!
最近食欲ないねって夕香里が誘ってくれて
私もコレなら食べられる~!!って期待に胸を膨らませてたのに
2口でギブアップしてしまった……
頭は食べたがっている、
心も欲しているというのに
体が言うことを聞いてくれないなんて
濃厚なチーズの香りを吸い込んで感動した次の瞬間吐き気がするという、
私にとって悲しすぎるループ
それは周囲の人にある疑いを抱かせる……
ああ、神様!
ほんのひと口でもいいマジ食べさせて!!
オーナーシェフのおじいちゃん、見てるのに!
奥さんのもの言いたげな瞳には、私を気遣いながらも戸惑う色がある
顔を覗き込む夕香里のそれも同じ色している
私だって可能性に気づかないわけじゃない!
けど今ここで認めるわけにいかないし、まだ決まったことでもない
それなのに妙な確信を持たれたら困るの~!