闇の果ては光となりて
「ど、どうして貴方がここに居るのよ!」
ヒステリックに叫んだ舞美さんに、私達はゆっくり視線を戻す。
普段、儚げで綺麗な彼女の顔は、般若の様に歪んでいた。
心の中が映し出されてるみたいだね。
「俺達が守ったからに決まってるだろうが」
低く唸るような霧生の声が響く。
「だいたい、神楽を攫うはずのこの男がここにいる時点でお前達の作戦が失敗したって事だろうよ」
総長はそう言うと引き摺っていた男を、彼女達の前に投げ捨てた。
人間って荷物みたいに投げられる物なんだね。
「こ、こんな男知らないわよ」
「なら、お前は知ってるよな? 岸部博、お前は鬼夜叉の岸部の兄貴で合ってるよな?」
総長の言葉に、岸部博は悔しげに顔を歪めた。
弟は大きな身体をしてたけど、岸部博は線が細いんだね。
どうでもいい事が、頭に浮かんだ。
「神楽を攫う為にお前達が立てた作戦は失敗だ。野良猫に喧嘩を売ってただで済むとは思ってねぇよな」
舞美さんと岸部博に凍り付く様な視線を向けた霧生。
「き、霧生、違うの。違うのよ」
焦った舞美さんが霧生に縋りつこうとするも、霧生はひらりと身を逸す。
「舞美、お前との付き合いももう終わりだ」
「そ、そんな、霧生待ってよ。貴方の子供を流産して身体を壊した私を捨てるって言うの?」
舞美さんの言葉に霧生が傷付いた顔になる。
霧生、貴方がそんな顔をする必要は無いんだよ。
霧生の辛そうな顔に泣きそうになった時、光の陽気な声が響いた。
「あれぇ? それは霧生のせいじゃないよね。ほら、これ見て」
光は自信満々にスマホの画面を翳すと、さっき私達が見ていた映像を流し始めた。
舞美さんと岸部博の会話が大音量で流れる。
それを見た霧生の顔からは、憂いが抜け去っていく。
反対に舞美さんは顔色を無くし、その場に崩れ落ちた。
「女ってやっぱ怖えぇわ」
憎々しげにコウが声を漏らす。
私は一歩前に踏み出し、舞美さんに話し掛けた。
「貴方は最低だよ。小さな命を軽々しく利用して霧生を騙して縛り付けたりするなんて、女として母親として最低だ」
「···え、偉そうに何を言ってるのよ。貴方だって親に愛された子供じゃないじゃない。義理の父親に付け狙われてるなんて笑いぐさだわ」
舞美さんの言葉に、やっぱりって思った。
「貴方達を影で動かしていたのは義父なんですね」
「そうよ。野良猫に囲われて大切にされてる子猫が居るって、教えてくれたのもその男よ」
「馬鹿ですね。そんな男の口車に乗ってこんな事をするだなんて。誰かの駒にされて動く事ほど馬鹿げたことは無いんですよ」
義父が糸を引いてたと知っても、驚かなかった。
それよりも、あんな奴に動かされた彼女が不憫に思えた。
私に手出しをしなければ、霧生はまだ彼女の側にいたかも知れないのにね。
「あ···あぁ···」
地面に突っ伏して泣き叫ぶ舞美さんの姿に、私の心はもう動かなかった。
ヒステリックに叫んだ舞美さんに、私達はゆっくり視線を戻す。
普段、儚げで綺麗な彼女の顔は、般若の様に歪んでいた。
心の中が映し出されてるみたいだね。
「俺達が守ったからに決まってるだろうが」
低く唸るような霧生の声が響く。
「だいたい、神楽を攫うはずのこの男がここにいる時点でお前達の作戦が失敗したって事だろうよ」
総長はそう言うと引き摺っていた男を、彼女達の前に投げ捨てた。
人間って荷物みたいに投げられる物なんだね。
「こ、こんな男知らないわよ」
「なら、お前は知ってるよな? 岸部博、お前は鬼夜叉の岸部の兄貴で合ってるよな?」
総長の言葉に、岸部博は悔しげに顔を歪めた。
弟は大きな身体をしてたけど、岸部博は線が細いんだね。
どうでもいい事が、頭に浮かんだ。
「神楽を攫う為にお前達が立てた作戦は失敗だ。野良猫に喧嘩を売ってただで済むとは思ってねぇよな」
舞美さんと岸部博に凍り付く様な視線を向けた霧生。
「き、霧生、違うの。違うのよ」
焦った舞美さんが霧生に縋りつこうとするも、霧生はひらりと身を逸す。
「舞美、お前との付き合いももう終わりだ」
「そ、そんな、霧生待ってよ。貴方の子供を流産して身体を壊した私を捨てるって言うの?」
舞美さんの言葉に霧生が傷付いた顔になる。
霧生、貴方がそんな顔をする必要は無いんだよ。
霧生の辛そうな顔に泣きそうになった時、光の陽気な声が響いた。
「あれぇ? それは霧生のせいじゃないよね。ほら、これ見て」
光は自信満々にスマホの画面を翳すと、さっき私達が見ていた映像を流し始めた。
舞美さんと岸部博の会話が大音量で流れる。
それを見た霧生の顔からは、憂いが抜け去っていく。
反対に舞美さんは顔色を無くし、その場に崩れ落ちた。
「女ってやっぱ怖えぇわ」
憎々しげにコウが声を漏らす。
私は一歩前に踏み出し、舞美さんに話し掛けた。
「貴方は最低だよ。小さな命を軽々しく利用して霧生を騙して縛り付けたりするなんて、女として母親として最低だ」
「···え、偉そうに何を言ってるのよ。貴方だって親に愛された子供じゃないじゃない。義理の父親に付け狙われてるなんて笑いぐさだわ」
舞美さんの言葉に、やっぱりって思った。
「貴方達を影で動かしていたのは義父なんですね」
「そうよ。野良猫に囲われて大切にされてる子猫が居るって、教えてくれたのもその男よ」
「馬鹿ですね。そんな男の口車に乗ってこんな事をするだなんて。誰かの駒にされて動く事ほど馬鹿げたことは無いんですよ」
義父が糸を引いてたと知っても、驚かなかった。
それよりも、あんな奴に動かされた彼女が不憫に思えた。
私に手出しをしなければ、霧生はまだ彼女の側にいたかも知れないのにね。
「あ···あぁ···」
地面に突っ伏して泣き叫ぶ舞美さんの姿に、私の心はもう動かなかった。