闇の果ては光となりて
「神楽、大丈夫か?」
霧生が私の顔を心配そうに覗き込む。
酷い顔してるんだろうな、今の私。
「大丈夫だよ、霧生」
「何があっても守ってやっから、そんな顔すんな」
霧生は優しく微笑んで、私を抱き締めてくれる。
その温もりに無性に泣きたくなった。
「さぁ、もう決着はついた。ここには用はねぇ。全員撤収だ」
総長がそう宣言すると、野良猫のメンバーは次々にエンジンを掛けて立ち去っていく。
「神楽、車に戻るぞ。そこまで泣くの我慢できるか?」
「···うん」
どうして霧生には、泣きそうな事バレたのかな。
霧生に背を支えられ、私は歩き出す。
コウも光もそんな私に心配そうな視線を送ってくるけれど、彼らが引き止める事は無かった。
「ああ、そうだ。岸部博、お前の所の組長には話をつけてある。今日付で絶縁状を回すそうだ。それと、お前とそこの女が薬を売り捌いて、自らも使ってた事は警察にリークしてやったから、迎えが来るの楽しみに待ってろよ」
総長は楽しげに笑って爆弾を投下すると、何食わぬ顔で彼らに背を向けた。
「そ、そんな···馬鹿な···」
今まで棒立ちで、完全な傍観者を装って私達の話を聞いてた岸部博が蒼白な顔で、その場に崩れ落ちた。
悪さをして、自分だけが逃れられるだなんて有り得ないんだよ。
「野良猫を舐めてたツケが回ってきたんだよねぇ」
「腸が煮えくり返るぐらいムカついてんのに、殴られねぇだけマシだと思いやがれ」
光とコウも、捨て台詞を残し彼らに背を向けた。
霧生は、一度も振り返る事は無かった。
きっと、もう彼らに伝える言葉は持ち合わせて無いんだろう。
ずっとずっと苦しんで来た霧生。
何とも言えない後味の悪い終わり方に、霧生の心を考えたら凄く苦しくなった。
舞美さんを思い、男としての責任を果たそうとしたのに、それが全て嘘だったなんて酷すぎるよ。
「霧生···」
名前を呼んで彼を見上げた瞬間、我慢していた涙が溢れた。
「あ〜まだ泣くな。お前の泣き顔は誰にも見せたくねぇんだよ」
困った様に眉を下げた霧生は、私の顔を自分の胸に押し付けた。
「だ、だって···」
「お前が泣くと、胸が苦しくなんだよ」
そんな事を言われても、溢れた涙は止められないよ。
「···霧生が泣かないから、私が泣くしかないじゃん」
心の中で霧生が泣いてるような気がしたんだ。
「馬鹿が···俺の為に泣いてんじゃねぇよ」
そう言った霧生の声が嬉しそうに聞こえたのは、きっと気のせいじゃない。
「いちゃつくのは溜まり場に帰ってからにしろよ」
総長のそんな軽い忠告に、私と霧生が頬を赤く染めたのは、言うまでもない。
霧生が私の顔を心配そうに覗き込む。
酷い顔してるんだろうな、今の私。
「大丈夫だよ、霧生」
「何があっても守ってやっから、そんな顔すんな」
霧生は優しく微笑んで、私を抱き締めてくれる。
その温もりに無性に泣きたくなった。
「さぁ、もう決着はついた。ここには用はねぇ。全員撤収だ」
総長がそう宣言すると、野良猫のメンバーは次々にエンジンを掛けて立ち去っていく。
「神楽、車に戻るぞ。そこまで泣くの我慢できるか?」
「···うん」
どうして霧生には、泣きそうな事バレたのかな。
霧生に背を支えられ、私は歩き出す。
コウも光もそんな私に心配そうな視線を送ってくるけれど、彼らが引き止める事は無かった。
「ああ、そうだ。岸部博、お前の所の組長には話をつけてある。今日付で絶縁状を回すそうだ。それと、お前とそこの女が薬を売り捌いて、自らも使ってた事は警察にリークしてやったから、迎えが来るの楽しみに待ってろよ」
総長は楽しげに笑って爆弾を投下すると、何食わぬ顔で彼らに背を向けた。
「そ、そんな···馬鹿な···」
今まで棒立ちで、完全な傍観者を装って私達の話を聞いてた岸部博が蒼白な顔で、その場に崩れ落ちた。
悪さをして、自分だけが逃れられるだなんて有り得ないんだよ。
「野良猫を舐めてたツケが回ってきたんだよねぇ」
「腸が煮えくり返るぐらいムカついてんのに、殴られねぇだけマシだと思いやがれ」
光とコウも、捨て台詞を残し彼らに背を向けた。
霧生は、一度も振り返る事は無かった。
きっと、もう彼らに伝える言葉は持ち合わせて無いんだろう。
ずっとずっと苦しんで来た霧生。
何とも言えない後味の悪い終わり方に、霧生の心を考えたら凄く苦しくなった。
舞美さんを思い、男としての責任を果たそうとしたのに、それが全て嘘だったなんて酷すぎるよ。
「霧生···」
名前を呼んで彼を見上げた瞬間、我慢していた涙が溢れた。
「あ〜まだ泣くな。お前の泣き顔は誰にも見せたくねぇんだよ」
困った様に眉を下げた霧生は、私の顔を自分の胸に押し付けた。
「だ、だって···」
「お前が泣くと、胸が苦しくなんだよ」
そんな事を言われても、溢れた涙は止められないよ。
「···霧生が泣かないから、私が泣くしかないじゃん」
心の中で霧生が泣いてるような気がしたんだ。
「馬鹿が···俺の為に泣いてんじゃねぇよ」
そう言った霧生の声が嬉しそうに聞こえたのは、きっと気のせいじゃない。
「いちゃつくのは溜まり場に帰ってからにしろよ」
総長のそんな軽い忠告に、私と霧生が頬を赤く染めたのは、言うまでもない。