闇の果ては光となりて
「そうなのね」
瑠奈さんは悲しげに私を見つめ何かを決意した様に話しだした。
「私達は仲良くなって、いつも2人でいたわ。中学2年生の頃、私達はとある暴走族の溜まり場に出入りする様になったの。美琴と貴方のお父さんはそこで出会ったのよ。彼女達は互いに惹かれ合い恋人同士になるのには、そう時間は掛からなかった」
「お父さんも暴走族だったんですね」
少し笑みが漏れた。
父親の事を何も知らない娘の私まで、暴走族になっちゃってるんだもん。
「仁君は、総長でね? 凄く格好良くて強い人だったわ。因みにうちのお父さん、郁人(いくと)は仁君の片腕だったのよ」
「はぁ? あの堅物の親父が族やってたのかよ」
霧生は素っ頓狂な声を上げた。
「そうよ。あの頃のお父さん凄く格好良かったのよ」
「なんだよ、それ。俺には暴走族なんてくだらない事は辞めろって煩かった癖によ」
やってやんねぇ、と霧生は吐き捨てた。
「お父さんが霧生に厳しく言ってたのは、亡くなった仁君の事があったからよ」
瑠奈さんは私を気遣う様に視線をくれた。
「大丈夫です。話してください」
私の知らないお父さんの事がとても聞きたかった。
「仁君と美琴はとても仲良くてね。いつも2人で笑い合ってたわ。高校3年の夏の終わり美琴が神楽ちゃんを妊娠して、仁君は迷い無く美琴と生まれてくる子供の為に卒業後に就職する事を決めたの。暴走族も辞めると決めて、年明けの引退暴走で最後になるはずだったの」
「···」
「あの日は雪が降るぐらい寒い日だったわ。少しお腹の膨らんだ美琴と私は、彼の最後の勇姿を見る為に溜まり場に集まった。仁君は危なげの無い運転で最後の暴走を走り終えたけれど、最後尾を走るメンバーが敵対していたチームの妨害にあってね。仲間を助ける為に再びバイクで飛び出した。居眠り運転のトラックがそんな彼のバイクに正面衝突したの。バイクごと吹き飛ばされ仁君は、路肩に投げ出され打ち所が悪くて即死だったと警察の人は言っていたわ」
「···そうなんですね」
会った事も見た事もない父親の話は、私にとって物語を聞いているようだった。
「仁君の49日が終わった後、美琴は大きなお腹をしたまま忽然と姿を消したの。私達がどれだけ探しても彼女は見つからなくて···」
瑠奈さんの顔が苦渋に歪んだ。
失意に暮れたお母さんは、自分達を知る人の前から姿を消したのは···どうしてかな。
「···」
「神楽、辛いならもう聞かなくていい」
霧生が黙り込んだ私の背中を擦ってくれた。
「辛いっていうのとは、ちょっと違うかな。私、お父さんの事は何も知らないからね。ただ、どうしてあの人は瑠奈さん達の前から消えたのかなって思って」
姿を消す必要が分からなかった。
辛い時に支えてくれる仲間を捨てる、その意味が···。
瑠奈さんは悲しげに私を見つめ何かを決意した様に話しだした。
「私達は仲良くなって、いつも2人でいたわ。中学2年生の頃、私達はとある暴走族の溜まり場に出入りする様になったの。美琴と貴方のお父さんはそこで出会ったのよ。彼女達は互いに惹かれ合い恋人同士になるのには、そう時間は掛からなかった」
「お父さんも暴走族だったんですね」
少し笑みが漏れた。
父親の事を何も知らない娘の私まで、暴走族になっちゃってるんだもん。
「仁君は、総長でね? 凄く格好良くて強い人だったわ。因みにうちのお父さん、郁人(いくと)は仁君の片腕だったのよ」
「はぁ? あの堅物の親父が族やってたのかよ」
霧生は素っ頓狂な声を上げた。
「そうよ。あの頃のお父さん凄く格好良かったのよ」
「なんだよ、それ。俺には暴走族なんてくだらない事は辞めろって煩かった癖によ」
やってやんねぇ、と霧生は吐き捨てた。
「お父さんが霧生に厳しく言ってたのは、亡くなった仁君の事があったからよ」
瑠奈さんは私を気遣う様に視線をくれた。
「大丈夫です。話してください」
私の知らないお父さんの事がとても聞きたかった。
「仁君と美琴はとても仲良くてね。いつも2人で笑い合ってたわ。高校3年の夏の終わり美琴が神楽ちゃんを妊娠して、仁君は迷い無く美琴と生まれてくる子供の為に卒業後に就職する事を決めたの。暴走族も辞めると決めて、年明けの引退暴走で最後になるはずだったの」
「···」
「あの日は雪が降るぐらい寒い日だったわ。少しお腹の膨らんだ美琴と私は、彼の最後の勇姿を見る為に溜まり場に集まった。仁君は危なげの無い運転で最後の暴走を走り終えたけれど、最後尾を走るメンバーが敵対していたチームの妨害にあってね。仲間を助ける為に再びバイクで飛び出した。居眠り運転のトラックがそんな彼のバイクに正面衝突したの。バイクごと吹き飛ばされ仁君は、路肩に投げ出され打ち所が悪くて即死だったと警察の人は言っていたわ」
「···そうなんですね」
会った事も見た事もない父親の話は、私にとって物語を聞いているようだった。
「仁君の49日が終わった後、美琴は大きなお腹をしたまま忽然と姿を消したの。私達がどれだけ探しても彼女は見つからなくて···」
瑠奈さんの顔が苦渋に歪んだ。
失意に暮れたお母さんは、自分達を知る人の前から姿を消したのは···どうしてかな。
「···」
「神楽、辛いならもう聞かなくていい」
霧生が黙り込んだ私の背中を擦ってくれた。
「辛いっていうのとは、ちょっと違うかな。私、お父さんの事は何も知らないからね。ただ、どうしてあの人は瑠奈さん達の前から消えたのかなって思って」
姿を消す必要が分からなかった。
辛い時に支えてくれる仲間を捨てる、その意味が···。