闇の果ては光となりて
「弁護士と早急に相談して、良い病院を探して、それから会いに行こう。もちろん、俺達も付いていくよ」
改めて4人でテーブルを囲み、今後に付いて話し合う。
郁人さんの提案は、とても有難かった。
「はい。甘えてもいいですか?」
子供の私じゃどうにも出来そうにないから、手助けして貰えるのはとても助かるけれど、郁人さん達に迷惑を掛けるのは、やっぱり心苦しかった。
「いいんだよ。子供は大人に甘えても」
優しい顔で微笑んでくれた郁人さんに、ドキッとしたのは霧生に内緒だ。
郁人さん、かなりのイケオジなんだもん。
「神楽、親父を見て赤くなってんじゃねぇよ」
あれ? 気付かれたよ。
隣に座る霧生に顔を覗かれ、さらにドキッとした。
「えっと···だって、郁人さんの顔は霧生にそっくりなんだもん」
「···くっ、まぁ、それは仕方ねぇか」
納得しちゃうんだね、霧生。

「本当、2人は仲良しねぇ。私、凄く嬉しいわ」
フフフと笑う瑠奈さん。 
「こんな可愛い娘が出来るなら、霧生みたいな糞ガキを育てたかいがあるよな」
しみじみと言葉を噛み締める郁人さん。
結婚まで話が飛躍してるけど、まだ付き合っても無いんですってば。

「だから···神楽は俺のだ」
横から私に抱き着いた霧生。
ドキドキするから、止めて欲しい。
「神楽ちゃんは、野良猫の溜まり場で暮らしてるのよね?」
私に抱き着く霧生をまるっとスルーした瑠奈さんが尋ねてくる。
この状況、かなり恥ずかしいんだけど。
「は、はい」
「なら、うちに越してこない?」
「えっ?」
「ほら、野良猫って男の子ばっかりでしょ? 女の子が1人暮らすのは色々と心配じゃない」
瑠奈さんは自分の頬に手を当て、首を傾ける。
「問題ねぇよ。俺の子猫に手を出す様な馬鹿はうちにはいねぇ。第一、こいつはチームの連中に可愛がられてんだよ」
確かに、みんな良くしてくれるんだよね。

「でもぉ···ほら、女の子には女の子にしか分からない悩みもあるでしょう? うちだったら私が相談に乗れるし」
「···それはそうたけどよ」
霧生が押され気味だ。
「それにね。私、女の子が居たら一緒にお料理したりお買い物に行ったりしたかったのよね」
「結局、自分の欲望の為かよ」
瑠奈さんのポロリと漏れた本音に、胡乱な目付きでツッコミを入れた霧生。
「瑠奈の欲望は置いておいても、神楽ちゃんはうちに来た方がいいと思うぞ」
郁人さんは真剣な顔で霧生を見た。
「どうしてだよ?」
「義理の父親が、何かして来てきてもうちならセキュリティーは万全だからな」
「野良猫の溜まり場も誰かしら居るから危なくねぇよ」
「敵対してるチームが攻めてきた時に、どさくさに漬け込まれたらどうするんだ?」
的を得た指摘をされ、何とも言えない顔で霧生が黙り込む。
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