闇の果ては光となりて
「彼女を1人でここに置くのが心配なら、お前も帰ってこい」
「···」
「それに、バイクで彼女を学校に送り迎えしてるようだが、うちなら車で安全に送り迎えが出来る。バイクなんて大人数で襲われたら逃げ切れないだろう」
「···それを言われたらそうだけどよ」
舞美さんの件が片付くまでは総長車で送り迎えしてもらってたけど、今はいつもの当番制に戻りバイクで送り迎えをしてもらってた。

「危険は出来るだけ避けるに越した事は無いぞ」
「神楽はどうしてぇ?」 
郁人さんから私へと視線を向けた霧生。
「あの、私、そんなに迷惑を掛けるのは申し訳ないです」
お母さんと義父の事で力を貸してもらうのに、私まで面倒を見てもらうなんて申し訳ない。
「そんなのは気にしなくていいのよ。うちはちょっとお金持ちだから、神楽ちゃん1人ぐらい増えても問題は無いのよ」
瑠奈さん、こんな豪邸に住んでおいて、ちょっととか謙遜しすぎですよ。
「···でも」
本当にいいのかな? 親切に慣れてない私は戸惑ってしまう。
「今まで通り溜まり場には通えば良いし、ここには寝るだけに帰って来ればいい。君が来てくれたら、家出中の霧生も帰ってくるから、うちにとっては有り難いんだ」
郁人さんは、私に気を使わせないように誘ってくれる。
と言うか、霧生は家出中だったんだね。

「神楽、お前の好きにしたらいいからな」
ポンポンと頭を撫でてくれた霧生。
「うん。でも、霧生の言う通りにする」
私には決断できそうに無いので、霧生に丸投げする事にした。
「···っ、お前、面倒になって丸投げしやがったな」
な、何故バレた?
確かにちょ〜っと考えるのが面倒になったんだよね。
親切に甘え過ぎるのもどうかと思ったし、かと言って無下に断るのもどうかなって···。
考えてたら、確かに面倒になりました。
「そ、そんなこと無いからね」 
顔の前で慌てた手を左右に振るも、霧生にジト目を向けられた。
「ククク、面倒臭がりなのは仁の専売特許だったな」
郁人さんが声を上げて笑い出す。
「面倒臭がりな仁君に、郁人は色々と押し付けられてたわよね」
昔を懐かしむ様に瑠奈さんも笑った。
どうやら、私の面倒臭がりは、父親譲りらしい。

「はぁ···親子揃って押し付けられ役かよ」
霧生は大袈裟な溜め息をついて、フッと口元を緩めた。
「ごめんね、霧生」
「お前の面倒なら、幾らでも引き受けてやるよ、仕方ねぇからな」
「ありがとう」
って笑ったら、霧生は満面の笑みを浮かべた。
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