闇の果ては光となりて
髪を乾かして、鏡の前で姿を整えた。
なんだか、中学生ぽい私が鏡に映ってる。
う〜ん、なんだかなぁ。
借りた服に文句は言えないよねぇ。
畳んでおいた濡れた服を入れる袋はないかと探してみると、3段ラックの上にあった。
何かの空き箱に、綺麗に形を整え並べられたビニール袋を一枚拝借してその中に一先ず詰め込む。
コンビニの袋を綺麗に三角に折畳むなんて、ここには几帳面なA型の人居るのかな?
大雑把なO型な私には、到底真似できない作業だよね。
感心しつつも、見渡した室内の清潔さにも恐れ入った。

落ち着いてよく見ると、男の子ばっかりの集団が過ごしてるとは思えないぐらい整理整頓され、綺麗に清掃もされてるんだよね。
暴走族って、イメージとはかなりかけ離れてる気がする。
「まぁ、いいか。もう来る事は無いだろうしね」
あんまり深く考える事は苦手だ。
霧生だって、貞子になってしまった私を憐れんで着替える為に連れてきてくれたんだろうし、ここを出たらその関係も解消されるだろう。
ちょっと···寂しいような気もするけど、野良猫に関わったら、ろくでもない事に巻き込まれるだろうからね。
ここを出たら、さようならでいい。


「さぁ、帰ろうか」
鏡に映る自分を見つめながら、言い聞かせるようにそう呟いだ。
今が何時だか分からないけど、お母さんが帰ってくるまでの間は近所の公園ででも時間潰しすればいいだろう。
あの男の待つ家へ一人で帰るより、マシだよ。
襲われた時の恐怖を思い出し、思わず自分の身体を抱き締める。
あんな奴の好き勝手になんてされてたまるもんか。
絶対に、私は負けない。
震えそうになる身体、手に力を込めてそれを圧し殺した。

何度か浅い深呼吸を繰り返し、今度こそとドアへ向かって歩き出す。
いつまでも他人に迷惑かけてちゃいけないや。
ドアノブを握り力一杯押し開ける。
···うん、間違ったね。
来た時には誰も居なかったソファーに、霧生を含め4人の男の子が座ってた。
そして、彼らの視線は間違いなく私に集中してる。
あ〜うん、ごめんなさい。
イケメン4人の視線に居た堪れない気持ちになった。
霧生と茶髪の男の子以外、驚きに目を見開き固まってる。
「し、失礼しました」
咄嗟にそう言ってドアを大急ぎで引っ張った。
一回、撤収だ。
あの視線には堪えらんないよ。

「待て待て! 神楽、出てこい」
半笑いで私を手招きした霧生。
出てこいと言われても、そこに出てく勇気は早々湧いてこないよ。
「怖い顔が2人ほど居るけど、噛み付いたりしないから、出ておいでよ、子猫ちゃん」
飼い猫でも呼ぶかのようにおいでおいでする茶髪の可愛い男の子。
いや、誰?
そんなフレンドリーに声をかけられても、困惑するんですけど。
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