闇の果ては光となりて
粗方の荷物を持ってきたダンボールに詰め終えた頃、玄関の鍵の開く音が聞こえた。
お母さんが帰ってきた。
私が立ち上がるより、先に立ち上がった瑠奈さんか玄関に向かって猛ダッシュしていった。
呆気にとられ佇む私に霧生は言う。
「ああなった母さんは止められない」と。
程なくして、聞こえたのは涙声で「美琴」と叫ぶ瑠奈さんの声と、パシッと何かを叩く音だった。
私達3人は顔を見合わせ、慌てて玄関へと向かった。
向かった先で私達が見たものは、頬を赤くしたお母さんにしがみつき号泣する瑠奈さんの姿。
放心状態のお母さんは、私を見止め困惑した表情で固まった。
「はぁ···瑠奈。美琴、生きていて良かった」
郁人さんは瑠奈さんの姿に苦笑いをし、お母さんを見て心底安心した様に顔を崩した。
「···い、郁人」
お母さんの口から紡ぎ出されたのは、私の名前じゃない。
分かっていた事だったけれど、胸の奥がキシッと音を立てた。
「···神楽。大丈夫か?」
心配した様な霧生の声に、私は彼を見上げ自嘲的な笑みを浮かべる。
「大丈夫。こんなの何時もの事だもの」
口ではそう言いながらも、私の顔はきっと酷い物だったと思う。
「あ〜だから、辛いのを我慢すんなって」
霧生は乱暴に私の肩を抱き寄せる。
「本当、大丈夫。まだ頑張れるから」
今ここで、泣いたりしないよ。
「···分かった」
なにか言いたげに私を見た霧生はその口を閉ざした。
「瑠奈、美琴を連れて車に戻ってろ」
郁人さんの言葉に瑠奈さんは泣き濡れた顔で振り返り、静かに頷いた。
「み、美琴、行こう」
「···」
戸惑う表情を浮かべたままのお母さんの手を引き、瑠奈さんはドアを開け部屋を出て行った。
「お前達も先に出てろ。後始末は俺が付ける」
「···ああ。神楽、行くぞ」
郁人さんに頷いた霧生は、私の肩を抱き締めたまま歩き出す。
ドアを抜け、廊下に出れば外に雨が降っていた。
ここに来る時は晴天だったのに、雨だなんて。
しとしとと降り注ぐ雨は、まるで私の心の中を映してるかのようで、なんとも言えない苦々しさが込み上げた。
思わず立ち止まり、両手で胸元を押さえ俯いた。
「神楽、もう泣いてもいいぞ」
霧生は私の頭を抱き抱えると自分の胸元に押し付けた。
「···っ霧生」
ふわりと香る霧生の匂いになんだか泣きそうになった。
「お前の母親がお前を愛せないって言うんなら、俺がお前を嫌ってほど愛してやる。だから、寂しいなんて思うんじゃねぇよ」
「···ん」
霧生の言葉に涙のダムが一気に崩壊した。
お母さんに愛されない事には慣れていたはずなのに、今更寂しいって思うだなんて、私はどうしちゃったんだろうね。
お母さんが帰ってきた。
私が立ち上がるより、先に立ち上がった瑠奈さんか玄関に向かって猛ダッシュしていった。
呆気にとられ佇む私に霧生は言う。
「ああなった母さんは止められない」と。
程なくして、聞こえたのは涙声で「美琴」と叫ぶ瑠奈さんの声と、パシッと何かを叩く音だった。
私達3人は顔を見合わせ、慌てて玄関へと向かった。
向かった先で私達が見たものは、頬を赤くしたお母さんにしがみつき号泣する瑠奈さんの姿。
放心状態のお母さんは、私を見止め困惑した表情で固まった。
「はぁ···瑠奈。美琴、生きていて良かった」
郁人さんは瑠奈さんの姿に苦笑いをし、お母さんを見て心底安心した様に顔を崩した。
「···い、郁人」
お母さんの口から紡ぎ出されたのは、私の名前じゃない。
分かっていた事だったけれど、胸の奥がキシッと音を立てた。
「···神楽。大丈夫か?」
心配した様な霧生の声に、私は彼を見上げ自嘲的な笑みを浮かべる。
「大丈夫。こんなの何時もの事だもの」
口ではそう言いながらも、私の顔はきっと酷い物だったと思う。
「あ〜だから、辛いのを我慢すんなって」
霧生は乱暴に私の肩を抱き寄せる。
「本当、大丈夫。まだ頑張れるから」
今ここで、泣いたりしないよ。
「···分かった」
なにか言いたげに私を見た霧生はその口を閉ざした。
「瑠奈、美琴を連れて車に戻ってろ」
郁人さんの言葉に瑠奈さんは泣き濡れた顔で振り返り、静かに頷いた。
「み、美琴、行こう」
「···」
戸惑う表情を浮かべたままのお母さんの手を引き、瑠奈さんはドアを開け部屋を出て行った。
「お前達も先に出てろ。後始末は俺が付ける」
「···ああ。神楽、行くぞ」
郁人さんに頷いた霧生は、私の肩を抱き締めたまま歩き出す。
ドアを抜け、廊下に出れば外に雨が降っていた。
ここに来る時は晴天だったのに、雨だなんて。
しとしとと降り注ぐ雨は、まるで私の心の中を映してるかのようで、なんとも言えない苦々しさが込み上げた。
思わず立ち止まり、両手で胸元を押さえ俯いた。
「神楽、もう泣いてもいいぞ」
霧生は私の頭を抱き抱えると自分の胸元に押し付けた。
「···っ霧生」
ふわりと香る霧生の匂いになんだか泣きそうになった。
「お前の母親がお前を愛せないって言うんなら、俺がお前を嫌ってほど愛してやる。だから、寂しいなんて思うんじゃねぇよ」
「···ん」
霧生の言葉に涙のダムが一気に崩壊した。
お母さんに愛されない事には慣れていたはずなのに、今更寂しいって思うだなんて、私はどうしちゃったんだろうね。