闇の果ては光となりて
自分のお気に入りを購入した2人と、ブラブラしながらウィンドウショッピングをする。
専門店街のショーケースに飾られたディスプレイを見ながら、私は霧生に似合いそうな物を探す。
男の子にプレゼントなんてした事が無いから、本当に迷うんだよね。
霧生って何が好きなのかなぁ···。
どうせなら、喜んでもらえる物をプレゼントしたいし。
そんな事を考えながら視線を向けた店の前で、私は足を止めた。
「気に入った物が見つかったか?」
同じ様に足を止めたコウが私を見下ろす。
「あ、うん。あのジャケット、霧生に似合いそうかも」
マネキンが着こなす、深い青色をしたカットテーラードジャケットを指さした。
体にフィットしたデザインのそれは、霧生に似合いそうな気がした。
「あ、この店って、霧生がよく着てるブランドだよねぇ」
店の看板を見て微笑む。
「そう言われりゃそうだな」
「そうなの?」
ブランドとかよく分かんないんだよね。
「うん、ここに入ってみる?」
「そうする。あのジャケット見てみたいし」
光の提案に頷き、入り口へと足を向けた。

「いらっしゃいませ」
店員の声に迎え入れられ店内に足を踏み入れると、シックな雰囲気のちょっと緊張する空気に包まれた。
高級感たっぷりなお店だね。
私は、2人を引き連れ目的のジャケットを探す。
「何かお探しですか?」
愛想良い笑みを浮かべ近付いてきた店員に、ディスプレイされてるジャケットが見たいと伝えると、とある一角へと案内された。

「こちらに色違いで数点置いております」
ハンガーラックには、さっき見たジャケットが吊り下げられている。
「あ、はい」
「このデザインはこの秋の新作なんですよ。脇腹をゆるく締めたデザインになっていて、体格をスッキリとして見せてくれます
ニコニコしながら、説明してくれる店員にどうにも落ち着かない。
有名ブランドの服屋の店員は、ちょっと面倒なんだと初めて知った。
普段お手頃な物しか買わない私にとって、ここは未知の世界かも知れないな。
説明を続ける店員の声を受け流しつつ、さっき一目で気に入った深い青色のジャケットに手を伸ばした。
手触りも良いし、落ち着いた感じのデザインで良さそうだな。
霧生に似合いそう。

「そちらのお色も綺麗ですが、一番人気はこちらです」
店員は色違いの黒を見せてくれた。
いやいや、私はこの色がいいんですってば。
ショップ店員···面倒くさいよ。
「これ、ください。プレゼントなので、包装もお願いします」
黒色を持った店員に、深い青色のジャケットをぐっと突き出した。
困惑した店員に気づかない振りをしてニコッと笑えば、「かしこまりました。直ぐにご用意します」と店員はそそくさとレジへと向かった。
はぁ···なんだか、疲れたよ。
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