闇の果ては光となりて
「ありがとうございました」
ショップバッグを手に、笑顔の店員に送り出され外に出れば、日が傾きかけていた。
霧生に似合いそうな物を買えた事に満足した私と、自分達の気に入った物を買えたコウ達2人の顔に浮かぶのは笑み。
プレゼント選びって大変だけど、達成感があるよね。

「小腹が空いたし、なんか食ってくか?」
レストラン街の方を指差すコウ。
「あ、そう言えば空いたかも」
お腹を押さえた。
「僕、ハンバーグ食べたい」
それ、ガッツリ夕飯だよね、光。
「俺は焼き肉食いてぇ」
それも、夕飯だってば。
「買ったジャケットに臭いがつくと嫌だから、焼き肉は却下だよ」
渡す前に焼き肉の臭いつくとか嫌だもん。
「···チッ」
「舌打ちされても焼き肉には行かないよ」
ノーと言える日本人です。
「だったら、やっぱハンバーグだよね」
ぴょんぴょんと飛び上がる光。
まぁ、ハンバーグなら良いけどね、と思ってると聞こえてきたエンジン音。
聞き覚えのあるそれに、目を向けると霧生の乗るビックスクーターが、大通りをこちらへと向かって走ってきた。

「うわっ、あいつ迎えに来やがった。マジで過保護だよな」
コウが面倒臭さそうに言う。
「えぇ〜ハンバーグ〜」
光はどうしてもハンバーグが食べたいらしい。
霧生の運転するバイクはゆっくりと私達の前で停車する。
「神楽、迎えに来た」
私に向かってそう言う霧生の瞳は少し怒ってる。
「駄目だよ、霧生。神楽ちゃんは僕達と晩御飯食べに行くんだからね」
腰に両手を当てプンプンと怒る光。
「はぁ? 知るか。神楽は俺と帰るんだよ」
出たよ、暴君。
「霧生も一緒に食ってこうぜ」
「行かねぇよ」
だから、どうしてコウと睨み合うのかなぁ。
「霧生はいっつも神楽ちゃんを独り占めしてるんだから、たまには僕達と遊んでもいいよねぇ」
「···チッ、俺の女なんだから、独り占めしても問題ねぇだろうがよ」
霧生の発言にドキドキしちゃう私は、相当彼が好きなんだと思う。
俺の女なんて、照れ臭いけど、かなり嬉しいかも。

「はぁ···霧生がここまで独占欲を出す様になるなんてなぁ。マジで人って変わるんだな」
大袈裟に溜め息をついたコウが、やれやれと苦笑いを浮かべる。
「確かに、軟派だった霧生がねぇ。僕、たまに自分の目を疑うよぉ」
光までクククと笑い出す。
「う、うっせぇ」
2人の指摘に恥ずかしくなったのか霧生は明後日の方向へと視線を向けた。
頬がほんのり赤くなってるよ、霧生。
そんな姿を可愛いかとも思ったのは秘密だ。
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