闇の果ては光となりて
霧生と帰ってきた溜まり場、2階の霧生の部屋でソファーに並んで座ってるものの、会話は無い。
迎えに来た時から不機嫌さは感じ取ってたんだけどね。
ブスッとしてバイク雑誌を読んでる霧生の横顔を盗み見る。

「んだよ?」
あ、気付かれた。
「え···っと、怒ってるの?」
もう聞くしかないよね。
「···別に怒ってねぇよ」
その言い方、怒ってるよね。
「···」
「帰ってきたら、神楽が居ねぇから···」
「うん」
「ちょっとムカついただけだ」
そう言ってそっぽを向いた霧生は、どうやら拗ねてるらしい。
出会った頃は大人びた感じだったけど、最近はこんな風に子供みたいな一面を見せてくれる事が嬉しいなって思う。

「フフフ···スネ夫君だね」
って笑ったら、
「うっせぇよ」
と頭を優しく小突かれた。
その時の霧生の顔が少し赤い様な気がして、胸キュンしちゃったのは内緒。
「今度、霧生も一緒に買い物に行こうね」
だから、もう拗ねないでね。
「当たり前だろうが。コウ達と行ったんだから、俺とも行くに決まってんだろ」
「そっか、だよね」
一緒に行くのは決定なんだね。
霧生の眉間に刻まれてたシワが無くなったのを見て、今度は声を出して笑った。
「だから、笑うなって」
「だって、霧生が可愛いんだもん」
「はぁ? 可愛くなんてねぇよ」
バイク雑誌を畳んでテーブルに置くと、霧生は私の方へと体を向ける。
射抜くように私を見つめる霧生の瞳に、ドキッと胸が高鳴った。

「誰が可愛いって?」
ゆるりと口角を上げた霧生は、ソファーの背もたれに手をついて私を囲い込む様にして見下ろす。
壁ドンならぬ、ソファードンです、これ。
「えっ···と、あの」
可愛さじゃなく妖艶さを醸し出す霧生に、私の心臓は今にも飛び出しそうだ。
ヤバい···これ、ヤバいってば。
からかうんじゃ無かったと、今更後悔しても遅い。
「神楽···なぁ? 可愛いのは俺じゃなくてお前だよな」
グイッと近付けられた顔に、体中の熱が一気に沸騰した。
私の顔、絶対に真っ赤だ。
「···ち、近い」
霧生の胸を両手で押しても、もちろんびくともしない。
「お前、顔真っ赤だな···ククク」
「··う、煩い」
霧生の前髪が額をかするように揺れる。
「何を買ったんだよ?」
「べ、別に買ってないし」
視線を彷徨わせてしまった。
でも、プレゼントの事はまだ話したくないもん。
どうせなら、誕生日に渡したいもんね。
霧生は、帰ってくる時に光に預けた荷物の事が気になってたらしい。
「ふ〜ん、そっ」
「へっ?」
あまりにもあっさりと引いた霧生に肩透かしを食らった。
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