闇の果ては光となりて
「なんだよ。もっと追求されたかったのかよ?」
何かを含んだ様にニヤリと笑う霧生。
「あ、ううん、そうじゃないんだけど」
追求されるのは困るけどね。
「なら、いいだろうが」
「うん、まぁ、そうだね」
「ククク、納得いかねぇって顔だな」
更に距離を縮めてきた霧生に思わず目を瞑ったら、優しいリップ音と共に額に何かが触れた。
これは、所謂デコチューだよ。
収まりかけていた鼓動が激しく高鳴った。

「なっ···な、な」
離れた霧生の唇に、目を見開き口をパクパクさせる様は、きっと滑稽に見えるだろう。
でも、今はそんな事を気にしてる場合じゃなかった。
こんなに激しく心臓を動かしたら、キュン死しちゃうじゃないかぁ。
「喋れてねぇし。そんな赤い顔で睨んでも可愛いだけだろうが」
私の赤面が移ったのか、そう言った霧生の耳が少し赤かった。
「か、可愛くないもん」
子供っぽい口調になってしまったのは、テンパり過ぎたせいだと思う。
「···はぁ。お前、マジで俺の理性を焼き切るつもりか」
霧生は大袈裟な溜め息をつくと、腕の中から開放してくれた。
「理性?」
今のやり取りって理性が必要だったかな。
分かってない顔で霧生を見上げると、彼はやれやれと首を左右に振って、ソファーに身体を深くもたれさせた。
「お前の保護者達がうっせえからな。お子様神楽のペースで進んでやる。だから、早く大人になりやがれ」
指先でツンと額を押された。
「···ムッ」
解せぬ···さり気なくディスられたのはなぜだろう。
モヤモヤした何かを感じつつも、早くなり過ぎた鼓動を収める為に、軽い深呼吸を何度か繰り返したのだった。
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