闇の果ては光となりて
「では、生年月日を教えてください」
黒いレースのベールを被った女性が小ぶりのテーブルの前に座るとそう言われた。
ちょっと神秘的に見えるから、中々本格的じゃない?
「〇〇〇〇年、6月20日よ」
「分かりました。目を瞑って貴方が今一番知りたい事を思い浮かべてください」
タロットカードをくり始めた占い師の言葉に従って目を瞑る。
因みに、樹弥は私の背後で仁王立ちしてる。

黒いベールで顔ははっきりと見えてないけど、彼女から並々ならない緊張感が伝わってくる気がするんだけど。
占い師に変なプレッシャー与えてないでしょうね。
カードの擦れ合う音を聞きながら、ぼんやりとそんなことを思った。

机にカードを置いて居るらしい音が聞こえ、それから1、2分後に占い師の声がした。
「貴方の運命が出揃いました」と。
目を開けるとそこには様々なカードが並んでいて、この並べ方って何か法則があるのかしらね? なんて客観的に思えた。
私の方に顔を向けると占い師が占いの結果を告げ始めた。
「貴方は今、人生の岐路に立っていますね。ここでの決断がきっと先の未来を変える···このカードは」
神妙な声でカードの位置と意味を伝え始めた占い師に、あながちお遊びでもないのかと考えた。
確かに岐路に立ってるといえば立ってるものね。
樹弥に返事をする事で、きっと私の今の状況は大きく変わるもの。
先の未来ね···占いに左右されるのなんてクソ喰らえって思うから、参考にするなんて事は無いけど、ちょっと面白かったかも。



「当たってたか?」
占いのテントを出た私に、樹弥が問い掛けてくる。
「そうねぇ。まぁ、無きにしもあらずって感じかしらね」
「ククク···霜月らしいな」
シニカルに笑う樹弥。
「占いなんかで私の未来を決めつけられたくは無いもの」
だつたら、わざわざ占ってもらったんだ? って話だけどね。
まぁ、そこは楽しいお遊びって事で許してくれないかしらね。
「まぁ、現実主義の霜月だから仕方ねぇな。神楽なら、本気で信じそうだけどな」
「あの子は単純だもの」
「フッ···確かに」
「でも、神楽はあれでいいのよ。あの子らしく可愛いもの」
「相変わらず溺愛してんな。霧生が霜月をライバル視するはずだよな」
「私をライバル視なんて100年早いのよ」
私達の付き合いの長さに、勝つ事なんてまだまだ出来やしないわよ。
まぁ、神楽が笑っていられるなら、暖かく見守ってやらないでも無いけれど。

「神楽に向ける気持ちの半分でいいから俺に向けろよ」
「なっ···何言ってるのよ」
急に真剣な顔でそんなことを言わないでよ。
ドキッとしたじゃないの。
無駄に顔が良い男はこれだから困るわ。
樹弥って、本当ストレートに気持ちを伝えてくるわよね。
それが嫌じゃないって思えるのは、少なからず彼を好きって事かしらね。
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