闇の果ては光となりて
第一章 出会い
海水を含み、随分と重くなった着衣が張り付いた身体は思った様に動かない。
それでも溺れたくは無いから、必死に手足を動かし防波堤にしがみつき、岸壁にクッション材の代わりにロープで吊り下げられた中古タイヤをよじ登る。
まったく···ついてない。
本当、今日はついてない日だ。
防波堤の上に転がるように乗り上げた頃には、息も絶え絶えになっていた。
両手両膝を付き、激しく呼吸をする。
無駄に伸びた海水を含んだ長い髪が、顔にへばり付き気持ちが悪い。
「はぁはぁ···本当、最悪」
無遠慮に悪態をつくと、隣で同じ姿で呼吸を整える男を一睨みした。
「···助けようとした人間にそりゃねぇだろ」
はぁ? 助ける? 何をだ。
「貴方のせいで海に落ちたんだよね」
後ろから飛び掛かってきたくせに、この人何を言ってるんだろう。
「はぁ? 俺は飛び降りようとしてたお前を助けようとしたんだろうが」
不機嫌に眉根を寄せた男の髪も海水でベッタリと顔に張り付いてる。
うわっ、かなりのイケメンじゃないか。
濡れ鼠のイケメンが、やたらと不格好に見えて笑いがこみ上げたのは、ご愛嬌だ。
「いやいや、それ勘違い。だいたい飛び降り自殺するのにこんな低い場所選ばないよね」
ちらりと防波堤の端に目を向けた。
ここの防波堤、海面までは一メートル半ぐらいしかないのに、飛び込んでも意味ないよね。
とんだ勘違い野郎だよ。
「···っ··マジか···」
男も防波堤の低さに気付いたのか、バツが悪そうに視線を彷徨わせ、溜め息をつく。
そして、身体を仰向けるとコンクリート面にお尻を付き後ろ手に片手をついて、もう片方の手で水の滴る前髪をかきあげた。
うわっ···本気の超イケメンだ。
こういう人を美丈夫とか、言うんだろうか。
切れ長な二重の瞳に、厚めの下唇が色気を醸し出してる。
月明かりにキラキラ光るのは銀髪だ。
濡れていて原型は分かんないけど、長めの前髪をアシンメトリーにして、サイドと後ろをツーブロックにカットしてる事だけは分かった。
端正な顔立ちの品の悪くない青年であるのは、間違いない。
だから、まじまじと見つめてしまったのは仕方ないと思う。
「ん? なんだよ」
不機嫌そうに眉根を寄せたイケメンに慌てて顔を背けた。
見すぎた、見過ぎたね。
「···何でもない。まぁ、その···一応お礼は言っとく、ありがとう」
勘違いだとしても、私を助けようとしてくれたのには間違いないんだしね。
「あ···お、おう」
私の言葉に目を丸くして恥ずかしそうに目を細めた姿に、ちょっとドキッとしたのは内緒だ。
それでも溺れたくは無いから、必死に手足を動かし防波堤にしがみつき、岸壁にクッション材の代わりにロープで吊り下げられた中古タイヤをよじ登る。
まったく···ついてない。
本当、今日はついてない日だ。
防波堤の上に転がるように乗り上げた頃には、息も絶え絶えになっていた。
両手両膝を付き、激しく呼吸をする。
無駄に伸びた海水を含んだ長い髪が、顔にへばり付き気持ちが悪い。
「はぁはぁ···本当、最悪」
無遠慮に悪態をつくと、隣で同じ姿で呼吸を整える男を一睨みした。
「···助けようとした人間にそりゃねぇだろ」
はぁ? 助ける? 何をだ。
「貴方のせいで海に落ちたんだよね」
後ろから飛び掛かってきたくせに、この人何を言ってるんだろう。
「はぁ? 俺は飛び降りようとしてたお前を助けようとしたんだろうが」
不機嫌に眉根を寄せた男の髪も海水でベッタリと顔に張り付いてる。
うわっ、かなりのイケメンじゃないか。
濡れ鼠のイケメンが、やたらと不格好に見えて笑いがこみ上げたのは、ご愛嬌だ。
「いやいや、それ勘違い。だいたい飛び降り自殺するのにこんな低い場所選ばないよね」
ちらりと防波堤の端に目を向けた。
ここの防波堤、海面までは一メートル半ぐらいしかないのに、飛び込んでも意味ないよね。
とんだ勘違い野郎だよ。
「···っ··マジか···」
男も防波堤の低さに気付いたのか、バツが悪そうに視線を彷徨わせ、溜め息をつく。
そして、身体を仰向けるとコンクリート面にお尻を付き後ろ手に片手をついて、もう片方の手で水の滴る前髪をかきあげた。
うわっ···本気の超イケメンだ。
こういう人を美丈夫とか、言うんだろうか。
切れ長な二重の瞳に、厚めの下唇が色気を醸し出してる。
月明かりにキラキラ光るのは銀髪だ。
濡れていて原型は分かんないけど、長めの前髪をアシンメトリーにして、サイドと後ろをツーブロックにカットしてる事だけは分かった。
端正な顔立ちの品の悪くない青年であるのは、間違いない。
だから、まじまじと見つめてしまったのは仕方ないと思う。
「ん? なんだよ」
不機嫌そうに眉根を寄せたイケメンに慌てて顔を背けた。
見すぎた、見過ぎたね。
「···何でもない。まぁ、その···一応お礼は言っとく、ありがとう」
勘違いだとしても、私を助けようとしてくれたのには間違いないんだしね。
「あ···お、おう」
私の言葉に目を丸くして恥ずかしそうに目を細めた姿に、ちょっとドキッとしたのは内緒だ。