闇の果ては光となりて
「総長、光と出掛けるってどういう事ですか?」
「ああ。お前の荷物を取りに行くのに光と数人付けるから、自宅に行ってこい。着の身着のままじゃ、どうしようもねぇだろ?」
この人は凄く色んな事を考えてくれるんだね。
懐の広い人って言うか、うん、良い人っていうか。
「荷物ぐらいなら、一人で持ってこられますよ」
皆に迷惑をかけるのは嫌だし。
「今の話を聞いて、お前を一人で行かせるほど俺は馬鹿じゃねぇぞ。義父にバッタリ会ったらどうするんだ?」
「昼間なら母親も居るから、大丈夫かな? と」
スナックで働いてる母親は昼間は家に居るはずだしね。
「万が一ってのがあるだろうが。光とうちの厳つい連中を連れていけ! これは総長命令だ」
「···はい」
総長の優しさに甘えよう。
本当に万が一があったら、私は今度こそ逃げられないだろう。
どんなに気が強くても、男の力には敵わないから。

「やった! 神楽ちゃんとお出かけだね」
ワクワクしてるというように笑みを浮かべる光。
「うん、よろしくね」
「もっちろ〜ん」
ピースした光に笑みが漏れた。
「本当は俺が付いていってやりてぇが、悪りぃ今日は野暮用があんだよ」
ポンポンと私の頭を叩く霧生の表情は浮かない。
「ううん、大丈夫。光と行くから」
「そうだな···。ちゃんとここに帰ってこいよ」
「うん、そのつもりだよ」
「ならいい。気をつけて行ってこいよ」
「あ、うん」
霧生の顔が憂いを帯びてる様な気がして、なんだか胸がざわめいた。
彼の言う野暮用って言うのが、そんな顔をさせてるのかな?
私が霧生の為に出来る事があるのなら、今度は私が彼を助けてあげたいな。
霧生にはここに連れてきてもらって居場所を作ってもらった恩があるしね。
漠然とそんな事を思い浮かべた私が、その理由を知る事になるのは、そう遠くは無い未来。
それを知る事で私まで苦しむ事になるだなんて、この時の私は知る由もなかったんだ。

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