闇の果ては光となりて
溜まり場の外は、ガーデンパーティさながらに幾つもの長テーブルが並び、テントの張られた一角には小振りのソファーが4つセットされていた。
うわぁ、本格的だよ。
あちらこちらで集まり談話するメンバーの顔はみんな楽しげで。
見てる私まで楽しくなった。
昨日この場所に来た時は、彼らを見て怖いと思ったのが嘘の様に思える。
だって、あんな笑顔を見たら今は怖いだなんてちっとも思わないんだもん。

「神楽ちゃ〜ん」
腕を高く上げ手を振りながら駆け寄ってくる光。
「飯盒の炊け具合はどう?」
「今、蒸らしてるから、そろそろ食べごろかも」
「じゃぁ、配膳しなきゃね」
「あ、いいのいいの。それはうちの連中がやってくれるから、神楽ちゃんはこっちこっち」
カレーの入った鍋の置かれたテーブルに向かおうとすれば、光は私の手を掴んで別の方向へと歩き出した。
「えっ? でも···」
「いいからいいから。コウがね、話があるんだって」
そう言って、ちらりとテントに視線を向けた光につられそちらを見れば、大股開きにソファーに腰をかけ仏頂面でこちらを見てるコウがいた。
睨んでるけど、本当に話なんてあるんだろうか。

「神楽ちゃん、がんばれ!」
「ファイトっす」
谷本さんと充希が笑顔で手を振り去っていく。
あ〜行ってしまうの?
追い縋るように谷本さん達を見つめてしまう。 
「さぁ行こうね。怖くないからね」
「···」
怖いよね、睨んでるから。
「大丈夫。あれはトマトだと思えばいいからね」
と、トマトって···確かに髪の毛は赤いけどね。
「てめぇ、誰がトマトだ!」
こっちを見てたコウが憤慨する。
まぁ、そりゃそうだ。
「あれ? 聞こえてたの? コウは地獄耳だね」
悪戯っ子みたいに笑う光。
「聞こえるように言ってただろうが」
「そんなことしないよぉ」
明らかに声が大きかったと思うよ?
「白々しいんだよ」
「そんな怖い顔をしてたら、神楽ちゃんが怯えちゃうだろ。トマトでいいじゃん」
やっぱりトマトを押すんだね。
「···チッ」
不機嫌に舌打ちをしたコウだけど、言葉を続けるのはよしたらしい。

光に手を引かれ、テントの前まで歩いていくと、4つあるソファーにはコウの姿しかなくて。
総長はまだ来ないのかな? と思っていると、急に手を離した光に背中を押された。
「じゃあ、仲直りしてね。僕はカレーを貰ってくるね」
「へっ?」
光まで居なくなるの?
戸惑う私を残して笑顔で去っていく光。
早っ···行動早すぎるよ。


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