闇の果ては光となりて
第四章 それらは絡まり複雑になる
総長達が戻って来たのは深夜を回った辺り。
私は緊張と疲れのせいからか、霧生に背を預けウトウトしていた。
幹部室のドアからど派手な音をたて、開いた事に驚き目を開けるとコウが一目散にこちらを目指してやってきた。

「神楽、守れ無くて悪かった」
私の前に膝を付き頭を下げたコウ。
「ううん、コウは私を守ろうとしてくれたよ」
彼の頭には白い包帯が巻かれている。
その痛々しい姿に、私の方が申し訳ない気持ちになった。
「目の前で連れ去られたんじゃ意味ねぇんだよ」
辛そうに顔を歪めたコウは、今回の事を随分と責任を感じているらしい。
「コウは約束通り迎えに来てくれたから、もういいよ」
手を伸ばし優しくそっとコウの頭を抱き締めた。
背後から不機嫌な舌打ちが聞こえたが聞こえない振りをする。
私のお腹に回った腕に力を入れるのは止めて欲しい。
圧迫死しそうだよ、霧生。

「無事で良かった」
「コウも」
「あいつ等はもう、神楽の前に顔を出す事はねぇから、安心しろよ」
「···うん」
何をしたんだろうか、気になる所だけど深く聞くのは止めた。
「あ〜! コウと霧生だけ狡いよぉ」
光のそんな声と駆けてくる足音がした。
「あ、止めろ!」
「来んな!」 
コウと霧生の焦った声の後に、ドシーンと派手な音を立てて光が飛び付いてきた。

「わぁ!」
「うぉ」
「···っ」 
私達は団子のようになって、床に転がる。
霧生が咄嗟に私の身体を庇ってくれたから痛みは無いけど、かなり驚いた。
「お前達は、一体何をやってるんだよ」
総長の笑い声が幹部室に響く。
霧生と霧生に抱きかかえられた私と、私には頭を抱かれたコウ、その上に光が乗り上げてる状態。
なに? この辺な状況。
可笑しくなって笑いが込み上げた。
誰とはなしに笑い声を上げる。 
それは次第に大きくなり、幹部室に広がった。

「ククク···なんだこれ」
コウが声を上げて笑ってる。
「本当締まらねぇな」
霧生がやれやれと溜め息をつき笑った。
「なんだか楽しぃ」
バタバタと手足を動かし光が笑う。
大切なこの場所に帰ってこられて良かった。
みんなの笑顔が失われなくて、良かった。
捕まってた時は、最悪な状況も考えたけど。
そうはならなくて本当に良かったと思うんだ。

「神楽が潰れる前に寄越せ」
側にやって来た総長が、団子状態の中から私を引きずり出し抱き上げた。
もちろん、総長お得意の縦抱き。
「あ〜総長」
光が情けない声を出す。
「煩せぇ。神楽、本当によく頑張ったな。無事で居てくれて良かった」
光をキッと睨んだ後、私の顔を覗き込んだ総長。
「迎えに来てくれてありがとう、総長」
「ああ。でもな、神楽、お前には少し言わなきゃななんねぇ事がある」 
「えっ?」
「岸辺を挑発した件だ」
「···」
「じっくりしっかり説教してやるからな」
「えぇ!」
どうやら、私はこれから総長の長いお説教を聞かなきゃいけなくなったらしい。
助けて欲しいと霧生達に目を向けると、3人ともバツが悪そうに目を伏せ視線を逸した。
「裏切り者〜」と叫んだ私はきっと悪くない。
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