闇の果ては光となりて
コウと他愛の無い会話をしていると、程なくしてDJがマイクパフォーマンスを始めた。
ノリのいい会話にフロアーに居た客達が熱狂的な声を上げる。
凄いパワーだなぁ。
みんな元気でノリがいい。
全身で楽しいと表現している客達の瞳には、熱い何かが煌めいていた。
DJの選んだ音楽がミキシングと共に披露され、フロアーの盛り上がりは一気に加速する。
会場は熱気の渦に包まれていた。
なんだか、楽しいな。
嫌な事を忘れ、一時の時間を謳歌する様々な人々に、こんな場所も無かったら駄目なんだろうと思った。
「チッ···あいつ、何考えてんだ」
聞こえてきた不機嫌な声に顔を向ければ、さっきまで上機嫌だったコウの顔が苛立たしげに歪んでた。
「どうかしたの?」
「い、いや、なんでもねぇ」
私の問いかけに慌てて視線を移動させたコウを不思議に思い、視線を向けようとした私の頭をコウが掌でガシッと掴んだ。
「なんでもねぇって言ってんだろうが! 見んじゃねぇよ」
「え〜理不尽なぁ」
コウに頭を掴まれ、動きの取れない私は情けない顔をしてたと思う。
「理不尽でもなんでもいいんだよ。お前は俺だけ見てろ!」
「え? それって告白?」
な〜んて冗談を言ったら、何故かコウの顔が赤くなった。
なんなだ、どうした、この事態。
「んな訳ねぇだろうがよ」
「だよね〜。言ってみただけだし」
「はぁ〜まじでお前、可愛くねぇわ」
「悪いが、可愛さは一つも見せてない」
きっぱりと言い返した私に、コウは大袈裟な程の溜め息をついてみせた。
気の抜けたらしいコウの手が緩んだチャンスを逃さず、さっきコウが見てた方向へと顔を動かした。
「あ! お前、止めろって」
コウの叫び声が右から左へ抜けていく。
「あっ···」
小さく声を漏らしたのは無意識だったと思う。
VIP席からフロアーへ降りる階段を、霧生と霧生にしなだれかかるようにして腕を組む彼女の姿に視線が釘付けられた。
霧生···。
楽しかったはずの気持ちが最下位まで一気に引きずり降ろされた気分だった。
会っているのは分かっていたけれど、現実に目にすると凄く苦しいや。
カーディガンの胸元を片手でギュッと掴む。
彼女に別れを切り出そうとしてる霧生が、彼女の腰を抱き寄せる姿になんとも言えない思いが込み上げる。
負い目のある霧生が、彼女を突き放せないのは理解してる。
だけど···それでも苦しいと思ってしまうんだ。
私にはそんな権利さえ無いっていうのに。
「馬鹿が! だから見んなって言っただろうがよ」
コウはそう言うと、今にも泣き出しそうな顔をしてるであろう私の頭を自分の胸に抱き寄せた。
温かさとほのかに香った柑橘系の香りに包まれる。
コウの優しさに切なさが増したような気がした。
ノリのいい会話にフロアーに居た客達が熱狂的な声を上げる。
凄いパワーだなぁ。
みんな元気でノリがいい。
全身で楽しいと表現している客達の瞳には、熱い何かが煌めいていた。
DJの選んだ音楽がミキシングと共に披露され、フロアーの盛り上がりは一気に加速する。
会場は熱気の渦に包まれていた。
なんだか、楽しいな。
嫌な事を忘れ、一時の時間を謳歌する様々な人々に、こんな場所も無かったら駄目なんだろうと思った。
「チッ···あいつ、何考えてんだ」
聞こえてきた不機嫌な声に顔を向ければ、さっきまで上機嫌だったコウの顔が苛立たしげに歪んでた。
「どうかしたの?」
「い、いや、なんでもねぇ」
私の問いかけに慌てて視線を移動させたコウを不思議に思い、視線を向けようとした私の頭をコウが掌でガシッと掴んだ。
「なんでもねぇって言ってんだろうが! 見んじゃねぇよ」
「え〜理不尽なぁ」
コウに頭を掴まれ、動きの取れない私は情けない顔をしてたと思う。
「理不尽でもなんでもいいんだよ。お前は俺だけ見てろ!」
「え? それって告白?」
な〜んて冗談を言ったら、何故かコウの顔が赤くなった。
なんなだ、どうした、この事態。
「んな訳ねぇだろうがよ」
「だよね〜。言ってみただけだし」
「はぁ〜まじでお前、可愛くねぇわ」
「悪いが、可愛さは一つも見せてない」
きっぱりと言い返した私に、コウは大袈裟な程の溜め息をついてみせた。
気の抜けたらしいコウの手が緩んだチャンスを逃さず、さっきコウが見てた方向へと顔を動かした。
「あ! お前、止めろって」
コウの叫び声が右から左へ抜けていく。
「あっ···」
小さく声を漏らしたのは無意識だったと思う。
VIP席からフロアーへ降りる階段を、霧生と霧生にしなだれかかるようにして腕を組む彼女の姿に視線が釘付けられた。
霧生···。
楽しかったはずの気持ちが最下位まで一気に引きずり降ろされた気分だった。
会っているのは分かっていたけれど、現実に目にすると凄く苦しいや。
カーディガンの胸元を片手でギュッと掴む。
彼女に別れを切り出そうとしてる霧生が、彼女の腰を抱き寄せる姿になんとも言えない思いが込み上げる。
負い目のある霧生が、彼女を突き放せないのは理解してる。
だけど···それでも苦しいと思ってしまうんだ。
私にはそんな権利さえ無いっていうのに。
「馬鹿が! だから見んなって言っただろうがよ」
コウはそう言うと、今にも泣き出しそうな顔をしてるであろう私の頭を自分の胸に抱き寄せた。
温かさとほのかに香った柑橘系の香りに包まれる。
コウの優しさに切なさが増したような気がした。