闇の果ては光となりて
「神楽、帰るか?」
「ん、そうだね」
もう、楽しめる気がしないよ。
「ごめんな」
上から落ちてきたコウの落ち込んだ声。
「コウが謝る事なんてないよ」
「俺がここに連れてこなきゃ、嫌なものを見なくて済んだろうがよ」
見上げたコウの瞳には後悔が滲んでいて、私はまた彼にこんな顔をさせてしまったのかと胸が痛んだ。
もう二度とさせたくないと思っていたのにね。
自分の不甲斐なさに涙が滲んだ。
だけど、ここで泣いちゃ駄目だと押し止める。
これ以上、コウに心配かけたくないもん。
「コウ、帰ろう」
彼の腕から抜け出すとニッコリと微笑む。
私、上手く笑えてるかな?
「ああ。帰るか」
「途中で美味しい物でも食べて帰ろう」
「おう、そうだな。美味いラーメン屋あんだけど、そこ行くか?」
「ラーメン?」
「嫌いか?」
「ううん、好き」
「なら、そこにするか」
「うん」
コウと会話をしながら、どちらとも無く歩き出す。
もう霧生の方へは視線は向けなかった。
彼が私達に気付いているのかは分からないけれど、彼女に笑い掛けている姿を見てしまったら、涙を止める自信が私には無かったんだ。
思いが通じなくても、側に居られるだけでいいなんて格好つけた癖に、私の心は自分が思うよりも弱いものでしかなかった。
恋って···こんなに苦しいんだね。
アハハ、始まったばかりだというのに、前途多難だな。
隣を歩くコウに気づかれない様に、口元に自嘲的な笑みを浮かべた。
DJのマイクパフォーマンスが続く中、人の流れに逆らい私達が向かうのは入り口。
その途中で見つけた化粧室の案内ボードの前で立ち止まる。
「ちょっと、化粧直し」
薄化粧の私にはそんなもの、本当は必要ない無かったけれど、目尻に残った涙の後を残しておきたくは無かった。
「分かった。そこで待ってるわ」
頷いたコウが親指で指したのは入り口のドア。
「うん。すぐ戻るね」
返事を返し、私は化粧室に向かって駆け出した。
「ん、そうだね」
もう、楽しめる気がしないよ。
「ごめんな」
上から落ちてきたコウの落ち込んだ声。
「コウが謝る事なんてないよ」
「俺がここに連れてこなきゃ、嫌なものを見なくて済んだろうがよ」
見上げたコウの瞳には後悔が滲んでいて、私はまた彼にこんな顔をさせてしまったのかと胸が痛んだ。
もう二度とさせたくないと思っていたのにね。
自分の不甲斐なさに涙が滲んだ。
だけど、ここで泣いちゃ駄目だと押し止める。
これ以上、コウに心配かけたくないもん。
「コウ、帰ろう」
彼の腕から抜け出すとニッコリと微笑む。
私、上手く笑えてるかな?
「ああ。帰るか」
「途中で美味しい物でも食べて帰ろう」
「おう、そうだな。美味いラーメン屋あんだけど、そこ行くか?」
「ラーメン?」
「嫌いか?」
「ううん、好き」
「なら、そこにするか」
「うん」
コウと会話をしながら、どちらとも無く歩き出す。
もう霧生の方へは視線は向けなかった。
彼が私達に気付いているのかは分からないけれど、彼女に笑い掛けている姿を見てしまったら、涙を止める自信が私には無かったんだ。
思いが通じなくても、側に居られるだけでいいなんて格好つけた癖に、私の心は自分が思うよりも弱いものでしかなかった。
恋って···こんなに苦しいんだね。
アハハ、始まったばかりだというのに、前途多難だな。
隣を歩くコウに気づかれない様に、口元に自嘲的な笑みを浮かべた。
DJのマイクパフォーマンスが続く中、人の流れに逆らい私達が向かうのは入り口。
その途中で見つけた化粧室の案内ボードの前で立ち止まる。
「ちょっと、化粧直し」
薄化粧の私にはそんなもの、本当は必要ない無かったけれど、目尻に残った涙の後を残しておきたくは無かった。
「分かった。そこで待ってるわ」
頷いたコウが親指で指したのは入り口のドア。
「うん。すぐ戻るね」
返事を返し、私は化粧室に向かって駆け出した。