闇の果ては光となりて
「この馬鹿! どうしてもっと早く言わないのよ。私に話してたら無駄に苦しまなくて済んだわよ」
お昼休み、裏庭で私の話を聞き終えたツッキーの第一声がこれである。
最後まで黙って聞いてくれた分、話し終えた後の彼女の怒りはすざましかった。
「えぇ、っと···すみません」
シュンと項垂れた私。
「本当、単純で呑気なんだから。だいたい見え見えの罠にハマってどうするのよ。神楽は人が良過ぎにも程があるわよ」
ツッキーの怒りと言う嵐が頭の上を通り過ぎていく。
怖い···怖いよぉ、ツッキー。
軽くディスッてくるツッキーの怒り方に、いつもみたいな冗談は返せない。
しかも、ツッキーの言う事が当たってて、言い返せる余地もないよ。

「神楽は人一倍警戒心が強そうに見えて、実は人の優しさと弱さに脆いのよね。上手くそこをついてきたわね、その女。どうやって吊し上げてやろうかしら」
腕組みして怖い事を口にするツッキー。
「あ···野良猫で対応するから、大丈夫だよ?」
ツッキーの機嫌を伺う様に、彼女の顔を仰ぎ見る。
「はぁ···それなら我慢するしか無いわよね」
良かった、考え直してくれたらしい。
胸を撫で下ろしていた私の耳に届いた言葉に目を丸める。
「七夕暴走、私も溜まり場に行くわ。その鮎川舞美とか言う女見てみたいもの」
「···あ、いや··それはどうかなぁ」
部外者は参加出来ないと思うよ、多分。
「聞くだけ聞いてみなさいよ。総長に今すぐ電話して」
ツッキー、なんて無茶振りをしてくるのよ。
泣きそうだよ。
「わ、分かった」
断る勇気の無い私を許してください。
スマホをポケットから取り出し、総長に電話を掛ける。
出てくれなくていいよ、と思うのに直ぐに通話に変わった。
『神楽、どうかしたか?』
「総長、あのね···その、幼馴染のツッキーがね」
『ああ。その幼馴染がどうした?』
「今までの経緯を話したら、舞美さんにブチ切れちゃって···それで」
『それで?』
「どんな奴か見たいから、七夕暴走に溜まり場に来たいって言い出して。あ、駄目だよね? 無理なら良いんだよ」
駄目だと断って総長。
でも、願いも虚しく総長の返事は···『いいぞ』だった。 
いや〜総長! 断ってくれないと血の雨降るじゃないですかぁ。 
「総長、ありがとう」
嬉しくないけど、お礼を言って通話を切った。

「総長はなんて?」
「いいって」
プルプルと唇を震わせそう言った私に、ツッキーは悪い顔で笑みを浮かべたのだった。
「楽しみ増えたわ。神楽、今から楽しみね。じっくりと見定めてやるわ」
ツッキー、私は心配でハラハラが止まらないよ。

こうして七夕暴走に溜まり場に来る事になったツッキーが、総長と意気投合して、先の未来を共に歩むようになるのは、別のお話。
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