闇の果ては光となりて
「ああ、そうかもな。どうやら、神楽の友達は獰猛な牙を隠さねぇ黒豹らしい」
クククと笑った霧生に、その場の緊張が一気に解けた。
黒豹かぁ〜そう言えば、それっぽいけど。
「神楽、あなた、今それっぽいって思ったわね」
「い、いたひよ、ツッヒー」
エスパーなツッキーに心を読まれ、ほっぺたを抓まれた。
「子猫の友達は黒豹かぁ。凄〜い」
光、空気読もうか、手を叩いてはしゃいでる場合じゃないからね。

「今日はここに来る許可をくれてありがとう」
光を丸っと無視したしたツッキーが総長に頭を下げる。
「ああ。神楽を心配してきてくれたんだろ?」
「この子、ちょっと抜けてるから心配なのよね」
「呑気な所もあるしな」
「そうなの! 緊張に欠けるって言うか何と言うか。とにかく心配で目が離せないのよね」
「それよく分かるぞ」
腕組みして会話してた総長が、感慨深げに頷いた。
何故、私をディスりながら意気投合してるだろうね。
ツッキーに抓まれていた頬を摩りながら、ぼんやりとそう思った。

「神楽を必ず守ってね。失敗は許さないから」
ツッキーが総長達を一人一人見据え、そう口にする。
「ああ、必ずだ」
総長が力強く頷く。
「もう目の前で攫われる様な失態は犯さねぇ」
女嫌いのはずなのに、コウがツッキーの目をしっかり見据える。
「僕も全力で守るよ」
力こぶを作り頷いた光。
「言われるまでもねぇよ。俺の子猫は俺が全力で守り切る」
霧生はそう言って挑発的に口角を上げた。

「そう、ならしっかりと守るのね。神楽、ここで待ってるから無事に戻ってくるのよ」
ツッキーは前半は霧生達に向かって、後半は私に向かってそう言った。
「うん。絶対に戻ってくるから、ツッキーも気をつけてね」
溜まり場を守る為に残留組が居るとはいえ、そこを狙って攻めてくるチームが居ないとは限らないし。
「そんな心配そうな顔しなくても大丈夫よ。私、こう見えて強いもの」
強いのは分かってるよ、ツッキー。
「残留組には、神楽の友達を守る様に言い聞かせてるが、危険を感じらたら迷わず逃げてくれ」
そう言ったのは総長。
「ええ、言われなくてもそうするわよ」
野良猫と一緒に戦う言われはないもの、と付け足したツッキー。
マイペースの強者がここに居るよ。

「霧生」
盛り上がった空気を壊す声が響き、私達は一斉に振り返る。
いつまで経っても自分の所に来ない霧生に痺れを切らした舞美さんが、愛車の側で霧生に向かって手招きした。
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