シンデレラは真夜中に踊る
「……風邪引きますよ」

北斗が声をかけると、「大丈夫!ずっと踊っているんだから」と笑顔で雫は返す。

「ねえ、一緒に踊って。一人じゃ寂しいじゃない」

雫が北斗の手を掴む。その目は、いたずらっ子のようなものではなく、拒絶されたらどうしようと言いたげな憂いも含んでいた。

「わかりました」

北斗は雫と手をつなぎ、くるくると屋上で踊る。

雫は夕方と変わらず美しい。魔法は十二時なのに解けることがなく続いている。

ふわり、ふわりと舞う雪が二人の上に降り注ぐ。踊っているため、体温が上がった体にはその寒さは心地よい。

その時、雫が北斗の胸に倒れこんだ。北斗は慌てて抱きとめる。ダンスの足が止まった。

心臓が、とてもうるさい。踊り終わっているのに体は熱いまま。

「ねえ、そろそろ気付いてよ…」

雫が北斗に体を押し付ける。北斗は何も言えずにただ雫を抱きしめる。

「僕は……」

触れた体の熱、心臓の音、雫の言葉ーーー。

北斗は、やっと自覚する。雫に恋をしているということ。そして、雫も同じ気持ちだということを……。
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