相思相愛ですがなにか?

「俺の部屋より広いから、きっと楽しいと思うよ」

「はい……」

どうやら、あまりにも熱心に部屋中を嗅ぎまわっているから、家探しするのが好きだと思われたらしい。

(やりすぎた……)

初日だというのにエンジン全開になってしまったことを反省しながら、伊織さんと屋敷の中を見て回る。

婚約パーティーで使用したホール、広々としたダイニング、図書室、ジムにプール。

広い広いと思っていたけれど、お客様として出入りしていた時には立ち入らなかったエリアにはまた新しい驚きがいっぱいだった。

「プールがあって嬉しいわ!!」

「好きな時に泳いでいいよ」

「やったあ!!私、泳ぐのは得意なの」

伊織さんの許可ももらったので、これで心置きなく泳げる。

体型維持のためにも運動は欠かせないが、ジムに通わず家で手軽にトレーニング出来るとあれば助かる。

「どこも素敵ですね」

「ただ広いだけだよ」

伊織さんは謙遜していたが、藤堂家の屋敷はただ広いだけでなく、どこも細やかな手入れが行き届いていて、家主が気持ちよく暮らせるように使用人たちが心を砕いているのがよく分かった。

伊織さん達、藤堂一家の皆さんもまた然りである。

「私、このお家がとっても気に入ったわ」

結婚したあかつきにはこの家が我が家となり、隣には夫である伊織さんがいる。

そんな当たり前の想像をするだけで心が満たされるのは、私が伊織さんを愛しているに他ならないからだった。

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