相思相愛ですがなにか?

「……だって私、処女だもの」

私がそう言うと雫ちゃんは飲みかけの紅茶に思い切りむせた。

真っ昼間からこの手の話をしたことに対してなのか、私が処女だという事実にびっくりしたのかはわからないが、ゲホゲホとせき込む雫ちゃんを私は白けた表情で見ていた。

大丈夫。こういう反応には慣れているもの。

親しい友人、誰に言っても驚かれるか、冗談だと思われるのよね。

(ほーんと、心外よね)

みんな私のことを誰彼構わず粉をかけるアバズレだとでも思っているのかしら。

「ええっ!?本当ですか!?」

ともかく雫ちゃんは茶化すのをやめて、話を聞く気になってくれたらしい。

「私だって……どうかと思ったわよ」

10年も片思いしていれば、伊織さんのことは諦めて他の男の人と付き合おうと思ったことくらいある。

いいなって思った男性とホテルに行ったことだってあるし、それこそ結婚前提で付き合って欲しいと告白されたことだってある。

「でも、いざその時になると、やっぱりだめってなっちゃうんだもん」

刷り込みなのか、執念なのかは、もはや自分でも良く分からない。

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