相思相愛ですがなにか?
「それで、収穫はあったのか?」
冬季緒は注文した水割りを待つ間、テーブルに頬杖をつきながら楽しそうに俺の表情を観察していた。
見合いの話を面白がっているのは明らかで、俺はあえて答えをはぐらかし、代わりに普段は滅多に吐かない愚痴をこぼした。
「なんだって女性は、ああも世間話が好きかな……」
見合いなんて、慣れないことはするもんじゃないと実感している。
毎日、顔も良く知らない女性相手の食事会に駆り出されては、毎回同じような美辞麗句を並べ立てられる。
女性たちには気の毒だが、そろそろうんざりしそうだ。
数か月ぶりにニューヨークから戻ってきたというのに、一日たりとも自由な時間がなく、仕事をしている時だけが唯一の安らげる時間である。
「大変だな~」
冬季緒は運ばれてきた水割りグラスを俺のグラスに当て同情するように乾杯してくれたが、心に一切響いてこなかった。
俺は大きなため息をつき、自棄とばかりにウイスキーを飲み干した。
(本当は見合いなんてしたくない……)
……俺には昔から心に決めた女性がいるからだ。
懐かしさと親愛の情をもって、彼女の名前を口にする。