相思相愛ですがなにか?
「私は月子が事務所に入ってからの付き合いですから、かれこれ7年の付き合いです。実は月子をスカウトしたのは私なんですよ。スカウトした当初は南城財閥のお嬢様だとは知らなかったんですけどね」
生まれた時から何不自由なく暮らしてきた彼女が、どういう紆余曲折を経て、モデルとして活動するに至ったのか……俺は一切知らなかった。
だからこそ、月子ちゃんをよく知っている陣内社長の目線から語られる真実に余計に耳を傾ける必要があった。
「モデルの仕事は見た目の華やかさと違って辛いことも多いです。スタイルを維持するための食事を制限し、ハイヒールを履きこなすためにいくつも豆をつくり、モデル間の競争も激しいですし、人目に触れる職業故にストレスも多い」
長年モデル業界に携わってきた陣内社長の言葉には、説得力があった。
きっとプレッシャーで潰れていくモデルをごまんと見てきたのだろう。
モデルとして生きることの大変さをしみじみ感じていると、陣内社長は次の瞬間、ルージュを引いた唇を上げニッと笑った。