相思相愛ですがなにか?

「月子はモデルになってから一度も大変だと感じたことがないって言うんですよ。性格が子供っぽいところはありますけど、モデルとしては天性のものがあります。生まれながらに超一流ですよ、あの子は」

所属事務所の社長にここまで言わせる月子ちゃんの才能とはどれ程のものなのだろうか。

「それは楽しみですね」

俺はショーが始まるのが俄然楽しみになった。開演時間まであと10分が待ち遠しい。

陣内社長は、なおも月子ちゃんの話を続けた。

「どうしてモデルを続けているのか、月子に聞いたことがあります。月子は自分の活躍を見せたい人がいると言っていました。そのためならどんな努力も惜しまないし、こんなの努力の内にも入らないと」

陣内社長はそう言うと、俺の顔を見てふっと表情を緩めた。

「きっとあなたのことですね」

モデルを続ける原動力が俺……?

「いえ……自分は……」

消去法で選ばれただけのかりそめの結婚で彼女を縛り付けている俺が、彼女にそんな影響を与えているなどありえない。

「ふふ。ご謙遜を」

とんでもない誤解だと否定したが、陣内社長はどうしても俺のことにしておきたいらしい。

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