相思相愛ですがなにか?
「月子ちゃんは俺には勿体ない女性ですよ」
もし、あの月子ちゃんにそんな風に想われている男がいるのだとしたら羨ましく思う。
俺はいつだって月子ちゃんの心が欲しくて、右往左往するばかりだ
……あのキスだってそうだ。
キスをしなければあの場を収めることが出来そうになかったから、なんとか本当にキスせずともバレない様に誤魔化したのに。
俺がどれだけキスしたがっているのか、我慢するのにどれだけ苦労しているのか、知らない月子ちゃんが見当違いな勘違いをするものだから、ついあんな路地裏で……。
(……違う)
何かと理由をつけたが、結局は俺がキスしたくて、キスしたくて、キスしたくて、たまらなかったんだ。
自分でたてた誓いすらかなぐり捨てて、目の前のチャンスを逃すまいと理性を空の彼方に追いやった。
彼女に惚れた5年前のあの夜から、俺はずっとあんな風にキスがしたかったんだ。