相思相愛ですがなにか?

「月子ちゃんは元気か?」

「元気、元気。この間お前がうちに来るって知らせなかったら、すっげえ怒られた」

「そうか……」

くるくると表情が変わる彼女を思うと、先ほどまで荒んでいた心が凪いでいくようだった。

帰国してすぐ南城家を訪れた際、月子ちゃんが留守だったのは俺にとっても非常に残念なことだった。

日本のみならず、世界でも活躍する一流モデルの月子ちゃんは、いつもファッションショーや雑誌に引っ張りだこだが、どうやら普段の生活も例外ではないらしい。

味気ない写真ではなく実物の彼女に一目でいいから会いたいと気が急いで、事前に連絡を入れなかったのが仇となった。

遠く離れたニューヨークにいても、彼女のことは片時も忘れたことがない。

情報収集は欠かさずこっそり日本から彼女が掲載されている雑誌を取り寄せていたことは月子ちゃんはおろか冬季緒だって知らない。

だから、これからするお願いは寝耳に水の話になるだろう。
< 15 / 237 >

この作品をシェア

pagetop