相思相愛ですがなにか?
ファッションショーが始まる時間になると、会場を照らしていた照明が落とされ、舞台にライトがあたり、にわかにアップテンポの音楽が鳴りだした。
舞台袖から次々とモデルが出てきては、中央のステージまで歩いていき、また戻っていく。
何人ものモデルが目の前を通りすぎていく中、……やがて、俺が待ち望んでいた瞬間が訪れる。
(綺麗だ……)
月子ちゃんが舞台中央をウォーキングすると、辺りの空気が変わったような気がした。
他のモデルと明らかに存在感が違う。
彼女の努力の成果が結集された一連の動作は無駄なく美しく、凛とした表情で衣装を翻しポーズをとると、舞台袖に戻っていく。
……でも、俺は知っている。
彼女が美しいのは、外見だけではなく、たゆまぬ努力を惜しまず、何事にも立ち向かっていく強い心を兼ね備えているからである。
俺は、そんな彼女のすべてを愛している。
俺は会場の特等席から月子ちゃんに惜しみない賛辞を送ったのだった。