相思相愛ですがなにか?

本当はショーが終わったら黙って帰るつもりだったが、陣内社長に勧めもあり控室までお邪魔することにした。

「お疲れ様」

そう声を掛けると月子ちゃんは衣装を着たまま一目散に俺のところにやってきた。

「伊織さん!!こんなところまで来てくれたの?」

月子ちゃんがいるならどこだって行くさ。

俺は背中にこっそり隠していた花束を、月子ちゃんにお披露目した。

「これ、どうぞ」

「わあ、いい匂い……」

花束を渡すと月子ちゃんは恍惚とした表情で匂いを嗅ぐと、心配そうに上目遣いで尋ねるのであった。

「……どうでした?」

感想を聞かれて、つい苦笑いする。

新進気鋭のデザイナーだけあって、ショーで披露された服は普段着になると思えないほど奇抜であった。

「ファッションのことは正直よくわからなかったけど、月子ちゃんが綺麗だったよ」

ショーの雰囲気にあてられ気分が高揚しているのか、朴念仁の俺でも素直に褒め言葉が出てくる。

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