相思相愛ですがなにか?
「お前を友人と見込んで折り入って頼みがあるんだが……」
「何だよ、唐突に」
友人であることをわざわざ引き合いに出すなんてただことではないと、冬季緒にしては珍しくおののいている。
俺だって冬季緒に頼むのは、本当に不本意だ。
けれど、もう悠長に手段を選んでいる時間がない。
このままだと、俺は父さんが適当に選んだ相手と結婚するしかなくなる。
それだけは嫌だった。
「月子ちゃんと結婚したいんだ」
……俺が結婚相手として心に思い描く女性は月子ちゃんただひとりだ。
恥を忍んで結婚の意を伝えると冬季緒はポカーンと口を開け、口の端から水割りがたらりと一筋零れ落ちた。
「なに?お前、あのアホ月子と結婚したいの?」
冬季緒は正気を疑っているのか、俺の肩に手を置いてガクガクと左右に揺さぶった。
月子ちゃんと結婚したいということがそんなにおかしいことか?
「俺は本気だ」
正気を疑われるなんて心外だ。
それにいくら何でも言い方というものがあるだろう?
実の兄とはいえ好きな女性をアホ呼ばわりされは俺だって、ムッとせざるをえない。
やはり、金儲けの才能はあっても、情緒が欠落しているのは否めないということか。