相思相愛ですがなにか?

「何で冬季緒くんがここに!?」

「お前こそ、伊織と何をコソコソ会ってんだよ」

「冬季緒くんには関係ないじゃない!?」

例の女性は伊織さんのことはそっちのけでお兄ちゃんと顔を合わせるなりガミガミと醜い言い争いを始めたのである。

(この人……伊織さんの昔の恋人なんじゃないの……?)

私はポカーンと口を開けながら、ふたりのやり取りを静かに見守っていた。

やがて、お兄ちゃんは期待外れの結果となってすべてが面倒くさくなったのか、急に投げやりになって、伊織さんにこう言った。

「あーあ。つまんねーの。俺、帰るわ。伊織、月子に説明しとけよ。浮気なんてしてねーってな」

「冬季緒くん!!待ってよ!!」

お兄ちゃんが片手を振ってバーから退散すると、それを追いかけるようにして例の女性の姿も消えていった。

お兄ちゃんに置いて行かれた私は、伊織さんに縋りつくしかなかった。

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