相思相愛ですがなにか?
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「誤解させたみたいで……ごめんなさい」

お兄ちゃんに不毛な片思いをしている泉さんは、後日わざわざ藤堂家の屋敷まで非礼を詫びに来てくれた。

私は威嚇するように脚を組んでソファに座り、彼女の言い分を黙って聞いていた。

「伊織くんとは本当にただの友達で!!冬季緒くんの愚痴を言うのに付き合ってもらっただけで、やましい気持ちはまったくありません!!」

私が想い人であるお兄ちゃんの妹ということもあるのだろう。

泉さんは出された紅茶には一切手を付けずに、ひたすら謝り続けたのだった。

ソファに座り腰を折って謝るだけでは気持ちが収まらないのか、床に頭をつけて土下座しそうな勢いである。

全力で否定されるとまるで伊織さんには魅力がないみたいで、それはそれでムカつくけれど、泉さんの気持ちは十分伝わったので今回の件は水に流すことにする。

「私こそ、こっそり後をつけてすみませんでした」

これでおあいこだろうと私も泉さんにあとをつけたことを謝った。

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