相思相愛ですがなにか?
「許してもらえて良かった……」
お兄ちゃんに何か脅されてでもいるのだろうか、無事身の潔白を証明した泉さんはホッと胸を撫でおろしていた。
ファッション誌のライターをしているという泉さんは、笑うとえくぼが出来てより一層可愛い印象になった。
(お兄ちゃんったら隅に置けないんだから……)
お兄ちゃんにどやされたからって、わざわざこんなところまで謝りにくるあたり、人が良すぎるだろう。
紅茶にふーふーと息を吹きかける泉さんは、私と目が合うと照れたように微笑んだ。
あのお兄ちゃんに片思い中の彼女には同情というか、憐れみというか……。
ともかく残念な気持ちを抱かざるをえない。
ホント、お兄ちゃんのどこが良いんだか……。
「何はともあれ……泉さんが伊織さんの恋人じゃなくて良かったわ」
これが伊織さんにチラとでも気があるようなら、社会的に抹殺する必要が出てくる。
汚い手を使わずに済んで良かったと心からそう思っていると、謝罪を受け入れてもらえて油断した泉さんがうっかり口を滑らせた。