相思相愛ですがなにか?

「伊織くんの恋人に間違えられるなんて恐れ多いわ。伊織くんが好きになるような人は私なんかよりずっと素敵な女性でしょうに」

「……“伊織くんが好きになるような人”ってどういう意味かしら?」

まるで、伊織さんには好きな女性がいるとでも言いたげの発言である。

泉さんは、私の表情が急に険しくなったことから自分が墓穴を掘ってしまったことに気が付いたようだった。

「ええっと……。冷静に聞いてね……?」

これが冷静でいられるものですか!!

私は泉さんの両肩を掴むと、我慢できずにがくがくと前後に揺さぶった。

「いいから早く話して!!」

「えっと……伊織くんがニューヨークに行く前だから3年ぐらい前かな?」

続きを急かすと泉さんは昔のことを思い出しながら、ぽつりぽつりと話を始めたのである。

「いつもみたいに冬季緒くんのことを愚痴ってたら、伊織くんが“大事だからこそ手が出せないこともある”みたいなことを言ってて……。あ、伊織くんにも好きな人がいるんだって気づいちゃったのよね」

泉さんの話はどれも初耳であり、私にとっては悪い知らせでもあった。

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