相思相愛ですがなにか?
密かに想いを寄せる女性がいたですって……?
しかも、伊織さんの片思い?
そんなの……恋人がいるよりもたちが悪いじゃない!!
「もっと詳しく聞かせてくれるかしら?」
「詳しくって言われても……。それからどうなったかは聞いていないのよ。恋人になったのか、別れたのか、それとも片思いのまま終わったのか……」
泉さんは本当に何も知らないのか、困ったように言い淀んでしまった。
「とにかく……随分昔の話だし、今の婚約者は月子ちゃんなんだから気にすることないと思うけど……」
「そう……よね」
泉さんの遠回しな慰めのセリフなど私の耳には一切入ってこなかった。
“俺の婚約者は月子ちゃん以外に考えられないよ”
そう言ってくれた時は飛び上がるほど嬉しかったのに、今は一転して絶望の淵に立たされている。
もしかして、まだその人を想っているの?
その人と結ばれないのなら、愛のない政略結婚でも構わないというの?