相思相愛ですがなにか?
私はその日、伊織さんが帰宅したのを見計らって彼の部屋の扉を叩いた。
「月子ちゃん?どうしたの?」
シャワーを浴びる前、ネクタイを緩め、Yシャツのボタンをいくつか外したばかりの伊織さんは私の突然の訪問に驚いていた。
「婚姻届のことなんですけど……」
私は一昼夜悩んだ末に、ある重大な決断を下すことにした。
これで本当にいいのか、何度も何度も考えて、考えすぎて、頭がおかしくなるかと思った。
……私はずるい。
結婚さえできればそれでいいって思っていたのに、伊織さんの傍にいればいるほどどんどん好きになっていって……。
あまつさえ、本当に愛されたいと願っている。
誰もが羨む相思相愛の夫婦になって、おじいちゃんとおばあちゃんになっても仲睦まじく笑い合って暮らしたい。
だから、今はまだ……。